東京・赤坂のふぐ料理屋「い津み」で安倍晋三・首相と岸田文雄・自民党政調会長は向かい合った。サシの会談は半年ぶりだった。
「(秋の総裁選は)賑やかになるんじゃないか」──安倍首相が総裁選の核心に触れたのは、ひれ酒を酌み交わし、過去の自民党総裁選の思い出話でひとしきり盛り上がった後の“一瞬”だったという。
この夜(1月25日)を境に岸田派では総裁選出馬論が急速にしぼみ、岸田側近からは「やみくもに戦いに挑む必要もない」(木原誠二・政調副会長)という声があがった。細田派議員が語る。
「総理は岸田さんが本気で自分と戦う覚悟があるかの腹を探るために招いた。総理は水を向けたそのときの返答で、岸田氏が総裁選に出馬せず、安倍支持に回るという確信を得たようだ。これで総理が退陣した後の次の次の総裁選で細田派は岸田さんを担ぎ、安倍の次は岸田という流れが事実上決まったとみていい」
政権禅譲説が流れるのは初めてではない。最初は昨年7月に安倍首相と岸田外相(当時)が外遊先のベルギーのホテルで会談、岸田氏が「どのような立場になっても安倍政権を支えていきたい」と伝え、そこで将来の政権禅譲の盟約がなされたというもので、「ブリュッセルの誓い」と報じられた。
次が半年前の昨年7月20日、2人は都内のホテルで2時間会談した。安倍首相は「宏池会(岸田派)は大事にしたい」と伝え、その後の内閣改造で同派から4人も入閣。このときも「禅譲が約束された」と囁かれた。