植物は物も言わず、ただただ静かな存在だ。それだけに、美しい花を咲かせたり、みずみずしい実を実らせたり、一途で力強い生命力を垣間見ると、感動せずにはいられない。
そんな植物の力を利用したリハビリテーションに、園芸療法がある。介護予防として園芸療法のプログラムに参加する高齢者の多くが、いつの間にか“ハマり”、イキイキとして元気になるという。恵泉女学園大学准教授で、NPO法人日本園芸療法研修会代表の澤田みどりさんに聞いた。
◆植物を育てる過程にかかわることが大切
「趣味でガーデニングを楽しんだり、買ってきた切り花を愛でたりすることとは少し違います」と言う澤田さん。
これらも植物の魅力ではあるが、園芸療法はあくまで治療法(セラピー)である。
「趣味の園芸は植物が主役。花をきれいに咲かせる、野菜や果実をおいしく育てる、花壇をおしゃれに作るといった目的をもって植物のことを学び、体を動かすことで達成感や満足感が生まれます。
一方、園芸療法は人が主役なのです。その人の障害や病気、加齢による機能低下などを改善し、その人らしくADL(日常生活動作)を維持・向上させることが目的です。高齢者は、体力の低下や認知症で外出が億おつ劫くうになり、家に閉じこもりがちになる。すると、お腹が空かないので食べない。足腰が弱って歩けなくなる、寝たきりになる…と生活不活発病への悪循環に陥りやすくなります。
介護予防として園芸療法を行う場合、まずその人の心身の状態、本人の希望などをもとに治療目標を決めます。そして目標に合った植物を選び、道具や作業環境もその人の力を引き出し、安全に作業できるように準備します。たとえば、療法を開始する季節に蒔く種の中から、本人がつかめるサイズのものを数種類用意し、選んでもらう。