大阪府に住む62才の主婦・響子は、こんな悩みを抱えている。
「結婚適齢期を過ぎようとしている娘がいます。本人はひとりで好きなことをやっていた方がいいらしく、その気がありません。若いうちは楽しいだろうけど、年を重ねれば、自分以外の誰かのために生きた方が毎日が生き生きする。私が亡くなり、もし娘が倒れたら、入院費を払ってくれたり、留守になった部屋の管理をしてくれる人もいない。娘は本当にひとりで生きていけるのでしょうか。不安でなりません」
「結婚=幸せ」と考える響子は長女(36才)が未婚であることが目下の悩みだ。3才年上の夫と職場結婚した響子には2人の娘がいる。ともに大学まで卒業させ、ある程度名の知れている会社に就職もさせた。
娘たちは就職のタイミングで実家を出て、次女は30才を迎えるころに結婚した。“次は長女ね”と思っていたが、マスコミに就職した彼女は昼夜問わず忙しいらしく、なかなか吉報が届かない。
思い返せば、大学を卒業するまで娘たちの面倒は何から何まで見てきた。出産以来、子供の世話に自分の人生を捧げてきたので、娘の独立後は時間を持て余している。同世代の母親たちが「とにかくかわいい」と“孫自慢”するのがうらやましく、自分も一刻も早く孫の顔が見たいと願う。
だが、頼みの綱にしていた次女は「価値観の違い」とやらで離婚の危機を迎え、子づくりどころではないみたい。
となれば気になるのは、やっぱり長女。世は晩婚化が進むが、長女には早く結婚して子供を産んでほしい。40才も近くなったし、今が勝負時ではないだろうか──。そんな焦燥感にかられた響子は、娘に代わって「婚活」しようと思い立った。
1か月後、響子は滋賀県にある某ホテルの宴会場にいた。今日はここで、「代理婚活」が開催されるのだ。
代理婚活とは、子供の代わりに親同士がお見合いし、息子や娘の結婚相手を探すというもの。響子は代理婚活をサポートする「良縁親の会」の活動をインターネットで知り、申し込んだ。参加することを長女に伝えようとしたが、どんな反応が返ってくるか怖くて、何も言えぬまま、当日を迎えてしまった。
◆「代理婚活会」で繰り広げられる光景
この日、集まった親は60人ほど。50代後半~70代で関西在住者が多いが、東京、神奈川、愛知から駆けつけた親もいる。参加者の子供の年齢は娘、息子ともに30代が中心だ。