年間販売台数のほとんどが冬に集中する加湿器。現在、駆け込み需要真っ只中に沸くこの家電だが、使い方の落とし穴も。それは、タンクに潜むレジオネラ菌の存在だ。1月19日には、大分県の高齢者施設で男性入所者3人がレジオネラ菌に感染し肺炎を発症。うち1人が死亡した。この原因が施設に設置された加湿器だったのだ。風邪予防のためのはずの加湿器で、逆にレジオネラ菌の猛毒に感染ということもありうる。これは大きなリスク。正しい管理・清掃法を学ぶ必要がある。
レジオネラ菌は、水に菌が繁殖し、その水が細かいミスト状になり、それを人が吸い込んだ時、肺に入って感染するケースがほとんどだ。例えばこれまでの感染例としては、入浴施設のジャグジーやシャワーなど、霧状の水が発生するような場所で感染が報告されている。
レジオネラ菌の増殖は、加湿器の種類によって防ぎやすいものとそうでないものがあるという。
加湿器は、振動を与えて水の分子を空気中に飛ばす「超音波式」と、濡れた布などに風を当てて空気中に水分を飛ばす「気化式」、水を沸騰させて水蒸気を噴出させる「加熱式」の大きく3タイプがある。昨今、家電量販店でよく見かける「ハイブリッド式」はこのいずれかを組み合わせたもの。どれを選べばいいのだろうか。
『レジオネラ症対策のてびき』(日本環境衛生センター刊)の著者で、対策に詳しい中臣昌広さんはこう語る。
「レジオネラ菌は、60℃以上の熱で殺菌されます。そのため、お湯を沸かして水分を放出する加熱式は比較的安全といえますが、熱を加えない超音波式と気化式は注意が必要でしょう。この2つを組み合わせたハイブリッド式も同様です」
大分県の施設では、超音波式の加湿器が使用されていた。選ぶなら加熱式の加湿器がよさそうだ。管理方法についてもコツがいる。
「加湿器の手入れは、洗浄と殺菌の2つを行ってください。水を毎日交換することはもちろん、取扱説明書を参考に、週に1度は中性洗剤でタンクや噴き出し口を洗浄する。その際、菌の温床となる傷の発生を防ぐためにも、硬いブラシやアルミ製スポンジなどは避けましょう。その後、市販されているミルトンなどの塩素系の消毒剤を溶かした水に、約1時間浸けて殺菌消毒してください。定期的に行うことで、菌の繁殖の抑止につながります」(中臣さん)
レジオネラ菌は、加湿器だけでなくシャワーヘッドやガーデニング用のホースから発生した例も報告されている。