ストイックに努力するセナを周囲は完璧主義者と呼んだ。実態は違ったのだが、彼はその言葉を好きだと言った。
「完璧主義という言葉は好きだ。そうありたいと願っている。だが、私も同じ人間だ。完全ではあり得ない。ただそうなるよう努めるしかない。それには与えられた状況の中で自己のベストを尽くすこと、極限からの戦いに挑むこと。この考えは私の血の中にあり、性格にしみ込んでいる」
残念なことに、最近、日本の若者たちの中にベストを尽くさずに80点、60点といった及第点で仕事を済ませようとする者が少なくないと聞く。人間は易きに流れる。だが、セナは違った。
「時には努力を怠りたいような気持ちに陥る時もある。そんな時、私を駆り立ててくれるのが責任感だ。まず私にパフォーマンスのチャンスを与えてくれるために働いてくれる人々に対する責任感。(中略)また多くの人々から見られているという責任もある。(中略)さらに言えば自分自身に対する責任、自分の能力に対する責任を自覚することも大事だと思う」
※SAPIO2018年1・2月号