都会で生活する人が地方にも生活拠点を持ち、行き来しながら暮らす“二拠点生活者”が増えている。2016年度から国土交通省が2つの地域での居住を促進するためのモニター調査を実施するなど、行政機関も、本格的な取り組みを見せている。
二拠点生活といえば、ひと昔前はシニア層が別荘地などにセカンドハウスを持ち、悠々自適な生活を送るイメージだったが、今は事情が変わってきている。
シニア層だけでなく、50代以下の現役世代でも、生活の場を都会と地方の2か所に構えるなど、二拠点生活者が幅広い年代で増えているのだ。
「私どもの調査では、昨年1年以内の移住相談件数約3万3000件のうち20~40代が全体の約7割を占めています。今はパソコンさえあれば、どこでも仕事ができますから、活動拠点を都会だけでなく、地方にも置きたいという気持ちがあるようです」(『ふるさと回帰支援センター』理事長・高橋公さん)
例えば、都会で流行の最先端に触れた生活をしつつ、田舎では古民家で暮らし、農作業で野菜を作る。そうした二拠点生活では、それぞれ違った経験ができて視野が広げられる。自然豊かな地方には、子育て支援が充実しているところも多いため、都会で仕事をしつつ、住民票は田舎に移してのびのびと子育てをする人も増えている。
都会と田舎双方のいいところを味わえる二拠点生活。が、注意点もある。1つは往復の距離と交通費だ。『移住・交流推進機構』総括参事の田染賢一郎さんは次のように説明する。
「例えば、東京と沖縄のように、2つの拠点を離れた場所にしている人もいますが、通う距離が遠いと、金銭的にも体力的にも負担が大きくなります。都心から車で2~3時間で通える関東近郊や、関西近郊が人気です」