また、児童・生徒によるいじめや先生によるパワハラの問題もAIのディープラーニング(深層学習)で対応可能だ。全国の学校の過去の事例をコンピューターに入れておき、似たような事例を調べてAIに的確な対処法を聞けば、大方の問題は解決できるだろう。

 では、そういう中で生身の人間である先生の役割は何か? それは親の役割と無限に近いものである。たとえば、人間の徳や倫理、生きる方法、社会のルールを教えると同時に、本人の能力を見抜いて的確な進路指導をすることだ。すなわち「メンター(助言者)」としての役割である。

 さらに重要なのは「答え」を児童・生徒と一緒に考えることだ。それはすでにデンマークやフィンランドなどの北欧を中心に20年くらい前から取り組まれている教育であり、そこでは先生は答えを“上から”教える「ティーチャー」ではなく、児童・生徒に答えを自分たちで考えることを促して議論を活発にする「ファシリテーター(促進者)」としての役割を担う。

 20世紀の教育は、最初から「答え」があって、児童・生徒にそれを覚えさせるトレーニングだった。しかし、21世紀は「答えがない」時代であり、先生も答えがわからない。そこでは、自分で質問して論理を組み立てて答えを推測し、クラスの仲間と議論する中でリーダーシップをふるって周囲の人たちを説得して一つの結論に導く(答えにたどり着く)能力が求められる。

 先生は、そういう能力を児童・生徒から引き出すために、「君はどう思う?」「あなたの意見は?」というように平等な議論のプロセスを主導する存在に徹しなければならないのだ。もちろんクラスの中でそういう議論を推進する能力のある児童・生徒がいれば、どしどし役割を入れ替わって“リーダーシップ”を発揮してもらう。それを見抜くのも指導者の役割、ということになる。

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