「怪物」がかつての輝きを取り戻せるか──。そのカギを握るのは、“92歳のフォークの神様”。中日にテスト入団し、沖縄キャンプのブルペンでの様子が連日、メディアを賑わせる松坂大輔(37)。その傍らで投球を静かに見守るのが臨時コーチを務める中日OB・杉下茂氏(92)だ。
フォークを武器に通算215勝のレジェンドは、“悩める平成の怪物”に何を伝えているのか。杉下氏を直撃すると、「基本は本人に任せていますが……」と前置きしてこう語った。
「繰り返し伝えているのは、『お前の持ち味は高めの速球だ』ということです。あとは『この時期のブルペンでは低めに投げようとしなくてもいい。経験があるのだから、思い切り腕を振って荒々しく投げればいい』と言って聞かせています」
思い起こされるのは、杉下氏が“昭和の怪物”を復活に導いたエピソードだ。
「杉下さんが長嶋(茂雄)巨人の投手コーチだった1979年のことです。5位に沈んで2季連続で優勝を逃した巨人は、若手を鍛えるために、当時では珍しい秋季キャンプを敢行。『地獄の伊東キャンプ』と呼ばれた。その時のルーキーが江川卓でした。
1年間の“浪人生活”もあってフォームを崩していた江川に杉下さんは、内角高めへの投げ込みと入念な走り込みを課した。結果、下半身リードのフォームを取り戻した江川はエースへの階段を駆け上ったのです。今回、杉下さんは松坂に、『大きく投げろ。足腰の土台を作れ』ともアドバイスしています。“江川再生”の経験からくる助言でしょう」(ベテラン記者)