平昌五輪を「平壌五輪」と揶揄されることなどもろともせず、核の脅威をもっとも身近に感じているはずなのに、韓国では政府やメディアが国を挙げて北朝鮮を持て囃す。日本人には、こうしたメンタリティーは非常に理解しがたい。
韓国出身で『朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実』(ハート出版刊)が話題の東亜大学教授・崔吉城氏が語る。
「私は朝鮮戦争勃発当時(1950年)、南北国境の北緯38度線近くに住んでいて、戦闘の現場も目撃しました。ところがその頃ですら、韓国内では“李承晩(韓国初代大統領)より金日成が好きだから北朝鮮による統一が望ましい”と考えている人も多かったのです。韓国では同じ民族だから統一するのが本来自然、同じ民族が一つになるのはいいことだという“統一当為論”が、国民の精神に根付いてきました。今の若い人たちはその考え方から脱しつつありますが、一昔前の韓国では当たり前の常識だった」
金日成か李承晩かという論点は、韓国人のメンタリティーを理解するうえで重要である。これは「国家の正統性」問題に連なってくるからだ。元朝日新聞韓国特派員でジャーナリストの前川惠司氏が解説する。
「金日成は、日本統治時代にパルチザンとして抗日運動に身を投じ、社会主義国家を樹立したという“英雄ファンタジー”がある。一方、李承晩は日本統治時代に上海臨時政府初代大統領になったが、実際には形ばかりで、戦後にアメリカの後押しで大統領になっただけ。だから、上の世代には、韓国には国家としての正統性がないと考える人が多いのです」