平昌五輪では文在寅・韓国大統領がひたすら北朝鮮を優遇する姿勢を見せ、北朝鮮との友好をアピールし続けた。だが、核開発を続ける北朝鮮に、韓国人は脅威を感じないものなのか。元朝日新聞韓国特派員でジャーナリストの前川惠司氏が解説する。
「韓国の人たちは、『核はアメリカを狙ったもので、自分たちに向けられたものではない』と信じている。南も北も“我が民族”だから、そんなことをするはずがないと。朝鮮戦争で多くの命が奪われ、北朝鮮が韓国に対して仕掛けてきたテロの歴史を思い起こせば、どうしてそう信じられるのか不思議でなりません」
日本では1987年11月に起きた大韓航空機爆破テロが知られているが、韓国では戦後ずっと、北朝鮮によるテロが続いてきた。
1968年1月には北朝鮮ゲリラ31人が韓国に侵入し、朴正煕大統領を暗殺しようとした「青瓦台襲撃事件」が起き、同年10月には、蔚珍・三陟地域に武装共産軍120人が侵攻し、住民ら20人余りを殺害した。
1999年からの10年間では、北朝鮮警備艇が韓国側領海に侵入する形で3度の軍事衝突が起き、多数の死傷者を出している。
北朝鮮の攻撃対象は常に韓国だったにもかかわらず、なぜか「自分たちに核は向けられていない」と信じているのである。その典型が文在寅大統領である。韓国社会に詳しい北海商科大学の水野俊平教授はこう言う。
「文在寅大統領は反米・親北の民族主義者で、『韓国に対するアメリカの影響力を弱め、南北、同じ民族で話し合えばうまくいく』という思想が根底にあります。しかし、文在寅の宥和政策の延長線上に、核の放棄があるとはとても思えない。金正恩は文在寅に『平壌に来い』と言っていますが、行くからには当然、お土産をもっていくことになる。国際社会が北に対して経済制裁を加えているときに、韓国だけが支援をすれば、国際社会は許さないと思う。北朝鮮の時間稼ぎに使われるだけですから」