絵本作家の「のぶみ」さんが作詞で、NHK『おかあさんといっしょ』で11代目うたのおにいさんを務めた横山だいすけが歌う『あたし おかあさんだから』が大炎上となった。〈あたし おかあさんだから〉というフレーズとともに、育児に追われる母親の日常が描かれているこの歌だが、ネットで配信されると「母親にがまんや自己犠牲を強いている」などと批判が殺到。のぶみさんは謝罪し、配信停止となった。
一方、「おかあさんだから〇〇」をバッシングすることは、「母になる覚悟」を否定することではないか。そう感じる人も少なくない。
「歌詞を読みましたが、当たり前のことを当たり前に歌っているだけです。配信停止なんてありえません」
こう語気を強めるのは、“セッチー”こと狂言プロデューサーの和泉節子さん。2000年代に長男・元彌さん(43才)の「宗家継承騒動」で注目を集めた節子さんは、岐阜県にある名家で生まれ育った。
26才の時、600年近い歴史をもつ狂言和泉流十九世宗家の和泉元秀氏に嫁いだ彼女は、これまでの自分を捨て、毎日つけていた日記を焼き捨てて伝統芸能のお家に飛び込んだ。
跡継ぎを産むことが絶対とされるなか、長女・淳子さん、次女・祥子さん、長男・元彌さんと3人の子宝に恵まれ、われを忘れて子育てに励んだ。
「3人の子供をきちんと育てるため、格好をかまっておしゃれをする余裕はありませんでした。長女の小学校受験には、1人を背中におんぶして、もう1人を抱っこして、上の子の手を引いて連れて行った。“みっともない”なんて言ってられませんでしたよ。3人同時に熱を出した時にはつきっきりで看病したし、子育てでは本当に大変な思いをしました」(節子さん)
当時は子育てに加え、朝7時から夜10時まで弟子たちにも囲まれる生活が続き、節子さんにはプライベートの時間が一切なかった。
もちろん、子供を預けて出かけたこともない。結婚以来はじめて映画館に行ったのは、長女が通っていた小学校で「この映画を見に行ってください」という宿題を出されたときだった。それでも、育児はまったく苦にならなかったと語る。
「母親になるということは尊い命を授かって、社会人として歩いて行けるようになるまで育て上げるということです。赤ちゃんは何もできないのだから、母親が身を犠牲にしないと育ちません。独身時代と子供を授かってからの自分はまるっきり違うんです。
でも今の母親にはその自覚と我慢が足りない。ある保育園の先生からは、『母親から愛情をもらっていないから、休日明けに保育園に来ると、ずっと先生の後をくっついて歩く子供が多い』という話を聞きます」(節子さん)