日本の食卓はかねてから多種多様なのが特徴であり美点だが、明らかなトレンドもある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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先日、総務省から2017年の家計調査が発表された。今回の調査結果(総世帯)から、現代日本人の食傾向をひもとくと、「肉食の底上げ」「日本人の魚離れ」という近年の傾向の加速に加えて、「コメ消費の下げ止まり」というような趨勢が伺える。
やはり近年の傾向として、日本人の肉食化は毎年確実に進行している。2007年には年額6万437円だった肉類への消費支出は10年で6万9388円と約15%伸びている。
最近の肉食傾向を見ると、熟成肉や赤身肉ブームなど「肉消費=牛肉」とのイメージも強い。この10年ほどの牛肉消費の流れは、2007年に1万6311円だった牛肉への消費支出は東日本大震災前後で1万4000円台まで落ち込むが、以降は徐々に回復。この数年は肉ブームの後押しもあって、2016年には1万7071円まで伸びた。今回の2017年は1万7000円台を割り込んだ(1万6970円)ものの、いまだ品薄が続くなど牛肉の人気は高い。
もっとも2017年の肉消費を牽引したのは牛肉というより、豚肉や鶏肉などの、より庶民派の肉だ。この10年で豚肉の消費支出は2割以上、鶏肉や合いびき肉も3割以上増え、前年比でマイナス成長となった牛肉を尻目に数字を伸ばしている。牛肉に一極集中していた肉ブームが豚や鶏にも波及し、合いびき肉のような調理に一手間かかる肉にまで飛び火したとも解釈できる。
フラッグシップとしての牛肉だけでなく、庶民的な肉に軸を移しながらさらなる伸びを見せる「肉食」。もはやブームやトレンドといったステージを越え、食におけるひとつのカテゴリーとして確立されつつある。すき焼き、焼肉といった薄切り肉だけでなく、塊での調理も一般的になってきた。今後、「日本の肉食」が伝統から文化にまで発展する道筋が見つけられるか。2018年はその見極めの年になりそうだ。
一方、食文化として確立されていたはずなのに、危機的なのが魚食である。2007年には7万4645円の消費支出があったのが、2016年には6万4157円に。最新の2017年は6万1846円とさらに3%以上の減となった。10年で20%以上、魚に対する支出が減っている。とりわけ大衆魚は惨憺たるもので、この10年でアジ28%、カレイが37%、サンマに至っては44%も家計からの支出が減少している。
昨今ではマグロやウナギといった天然の資源としての魚の枯渇が問題になっているが、それに歩調を合わせるかのように魚食という文化自体が日本の食卓から衰退しつつあるのだ。資源も食文化も消費され尽くす前に、実効性のある手立てを考えなければならない時期に差しかかっている。