イギリスとの3位決定戦を制し、見事に銅メダルを獲得した日本カーリング女子。客席で日の丸が揺れる中、選手たちがインタビューの場で発したある人物の名前が話題になっている。カーリング取材歴9年で、平昌五輪現地を取材した竹田聡一郎氏がリポートする。
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「れんたろー先生!」
カーリング史上初のメダルを獲得した直後、涙涙のインタビューを終えたカーリング日本代表、ロコ・ソラーレ北見(以下LS北見)のメンバー。インタビューの最後、スキップ・藤沢五月が拳を握り、カメラに向かって笑顔でそう言った。
するとメンバー全員が「れんたろー先生!」「れんたろーさん! 見てるー?」とカメラに向かって手を振り始めた。
快挙を達成した彼女らが真っ先に感謝と報告を伝えたい存在である、この「れんたろー先生」とは何者なのか。ネットでは「まさか藤沢ちゃんの彼氏か!」などと勘ぐる声が挙がったが、その正体はLS北見の鈴木廉太郎トレーナーだ。
今回の五輪でチームに帯同していたのは大森達也チーフトレーナーだが、鈴木トレーナーはその大森トレーナーと同僚であり北見市内のスポーツクラブ「PHYSIT(フィジット)」に勤務する。本橋麻里と同じく1986年生まれで、本橋の息子と鈴木トレーナーのお子さんも同い年という縁もあり、チームとは家族ぐるみの付き合いをしている兄のような存在だ。冒頭で紹介したインタビューでも、セカンドの鈴木夕湖は「れんちゃん!」と呼ぶなど、距離感の近さを感じさせる。
“れんちゃん”は、日本選手権の大きな試合や冬季アジア大会などの国際大会、海外遠征などにも足を運び、チームのコンディションを保つ。我々、メディアにも丁寧に挨拶してくれるメガネの似合う好漢は、時には選手ごとの「肩周りの筋肉がちょっと張っている」など小ネタを提供してくれる。
LS北見はチーム結成以来、大森、鈴木両トレーナーについて五輪などの長丁場に耐えられる身体を作ってきた。決してサイズに恵まれたとは言えない5人だったが、投げ込みとチーム練習の通称“2部練”の後にさらに筋トレを重ねるなど筋力と体重がそれぞれ増えていった。
特に大森達也チーフトレーナーの組むメニューはストイックなものだったが、メンバーは「厳しいけど結果が出るのでついていく」と歯を食いしばりながら師事した。2016年年末にはチームのSNSに“恋ダンス”をアップしたが、その最後に「逃げるは恥だが役に立つ」に倣って「達也は鬼だが愛がある」と感謝のメッセージを添えた。