米連邦調査局(FBI)は米ペンシルバニア州のフィラデルフィア博物館に展示されていた中国の「秦の始皇帝陵」出土の兵馬俑を破損させて、左手の親指を盗んだとして、米デラウェア州在住のマイケル・ロハナ容疑者(24)を逮捕した。この兵馬俑は中国陝西省西安市政府傘下の陝西文化遺産推進センターが2017年9月から2018年3月まで同博物館での兵馬俑展に展示するため貸し出していた10体のうちの1つ。同センターでは博物館側と交わした契約書に基づいて、この男に450万ドル(約5億円)の損害賠償額を請求するとしている。
中国国営新華社通信や中国青年報などによると、ロハナ容疑者は昨年12月21日、クリスマスを前に博物館で行われた慈善事業を兼ねたパーティに参加し、知人2人と兵馬俑展の会場に忍び込み、兵馬俑に抱きつくなどして、左手の親指を破損させて、盗んだという。
博物館側がこの兵馬俑の被害に気が付いたのが犯行から約3週間後の今年の1月8日で、すぐに博物館の責任者がFBIに通報し、FBIの美術専門捜査官が出動。監視カメラなどから、パーティに参加していたロハナ容疑者であることを突き止め、同13日にはデラウェア州の容疑者の自宅に急行し、逮捕した。
FBIの捜査チームはこの兵馬俑の価値が450万ドルと見積もったという。博物館側は事件があったことを西安市の同センターに知らせるとともに、丁重に謝罪したが、センター側では「兵馬俑は中国の国宝であり、2000年もの歴史を持つ中国の伝統的な重要文化財。それだけに、破損させるとは許しがたい暴挙であり、極めて遺憾であり、怒りを禁じ得ない」などと男を激しく叱責するとともに、博物館側の監視体制も甘さも非難するなどカンカンになって怒っている。
このため、中国側では特別対策チームを緊急に編成し、対応を協議した結果、「FBIによる兵馬俑の価値に基づいて、ロハナ容疑者に450万ドルの損害賠償を求めることを決めた」と博物館側に通知し、FBI側とも協議し、正式な手続きをとるという。