スマートフォンやスマートスピーカーの音声認識機能など、「AI」がより身近なものとなっている昨今。矢野経済研究所では2025年には世界でAIによる自動運転の車の数は2300万台を超えるという見込みを発表している。
会社でも家庭でもAIが席捲するような社会が現実味を帯びるなか、「このままでは人間がAIに仕事を奪われるのでは」と心配する声も多く聞こえる。
野村総研の発表によれば20年後には日本の労働人口の49%が人工知能やロボットで代替可能になるという。
『2001年宇宙の旅』『A.I.』『アイ・ロボット』など、最初は人間をサポートしていたAIがどんどん人間界に侵食していき、やがて私たちがコントロールできる範囲を超え、「人間 vs AI」の構図へと変わっていく様子は映画でも繰り返し描かれてきた。
そんなの夢物語だと思っていたけれど、もしかして、このままいけば夫はAIに職を奪われ、子供はロボットとしかコミュニケーションを取れなくなり、わが家も機械に侵食される? そう考えると、明るいAIスピーカーの声も不気味に思えてくる…。
が、人工知能学会会長で国立情報学研究所教授の山田誠二氏は、「それはありえない」と断言する。
「約半数の仕事がAIに取って代わるという認識は誤解です。人間の仕事は細かいうえに多岐にわたる。一部がAIに代替されたとしても、1人の人間の仕事が丸ごと乗っ取られるとは考えにくい。たとえば単純と思われがちなコンビニ店員の仕事でも、レジ打ちにおでんの仕込み、トイレ掃除などを合わせると、およそ数十種類あります。すべてをAIが行うことはほぼ不可能です」
機械が人間の仕事を奪った例としてよく出されるのが、駅の自動改札だ。確かに今では駅員が手で切符を切る姿はほとんど見られないが、駅員がいなくなったわけではないと山田氏は指摘する。
「自動改札機ができても駅員は大量リストラされることはなく、構内で別の仕事を続けています。これと同様に、たとえこの先にAIが人間の仕事の一部を担うようになっても、AIの管理やメンテナンス、研究開発は人間の仕事。むしろAIの普及により、そうした新しい仕事が増える可能性は高い」
AIは人間の生活を侵食する“敵”ではなく、つらい作業を担い、助けてくれる“パートナー”になるのだろう。そこで注目されるのが、AIの「人と人をつなぐ」能力を利用したビジネスだ。