「3階の端の部屋の前から1階のエントランスまで、飼い主が踏んだ猫の糞の足跡だらけですよ。1階までにおうし、マンションの周りには一年中ハエがたかっています。夏は特ににおいが強烈で、窓は開けられませんでした」
「行政の人が部屋の中から大量のケージを外に出した時、表現しがたい悪臭がマンション中に充満しました。子供たちも顔を背けていた」
ため息交じりに話すのは、神奈川県川崎市麻生区にあるマンションの住人たち。2月19日、同マンションの3階の一室で猫23匹を不衛生な環境で飼育し、虐待したとして、自称デザイナーの堀口妙子容疑者(62才)が動物愛護法違反の疑いで逮捕された。
マンションの管理会社によると、単身、堀口容疑者が入居してきたのは約2年前。マンションはペット飼育不可にもかかわらず、堀口容疑者は捨て猫を拾っては持ち帰り、ケージに閉じ込めて放置。あまりの異臭に住人から苦情が殺到していた。
管理会社は再三にわたって堀口容疑者に猫の飼育をやめるよう訴えたが、聞く耳を持たなかったため、昨年10月、裁判所に立ち退きを要請。12月に行政による強制退去が執行された。23匹の猫は、川崎市の動物愛護センターなどに引き取られた。強制退去に立ち会ったマンションの管理人が語る。
「部屋の中に入った時は、すさまじい悪臭と汚さで頭がくらくらしました。窓にもびっしり虫がいて、床は猫の糞尿でべたべた。ビニール袋や荷物が散乱し、足の踏み場もない状態でした。思い出すだけで吐き気がします」
◆ケージの中の猫はほとんど身動きが取れなかった
堀口容疑者の部屋の間取りは3LDK。13畳のリビングに、6畳の洋室が2つと和室が1つで、家賃は約9万円。
「床も壁も天井も、すべての部屋に糞尿のにおいが染みついていました。当然全て張り替えです。これだけ汚いと、一体どこで寝ていたのかと不思議になりますね。ベッドはどの部屋にもありませんでした。猫がいたのはリビングです。室内にはケージが2段、3段と縦横に並べられていた。その中に1匹ずつ猫が入っている状態でした」(管理人)
部屋には、もともと24匹の猫がいたが、1匹は死んでいた。動物愛護センターが保護した猫のうち22匹の不妊去勢手術を請け負ったNPO法人ねこけん代表理事の溝上奈緒子さんが指摘する。