一方、アルコール度数の高低では『-196℃ストロングゼロ』や『ほろよい』、果汁系では『こくしぼり』、さらには『角ハイボール』『トリスハイボール』など、すでに幅広いジャンルを揃え、RTD市場でトップシェアを誇るサントリースピリッツは、変化球ともいえるカクテル『ザ・カクテルバー プロフェッショナル』を投入する。
「サントリーとしては、既存ブランドのさらなる強化を図りつつ、新RTDは飲用シーンに着目。自宅で食後に優雅に飲めるブランドが少ないこともあり、高級ジンなどを原料にしたカクテルで若者や女性ユーザーなどを取り込みたい考え」(飲料業界紙記者)
RTDでは後発組の2社も上位ブランドの切り崩しを狙う。
『ネクターサワー』や『愛のスコール ホワイトサワー』、『キレートレモンサワー』、『男梅サワー』などコラボ戦略を織り交ぜながらオンリーワン商品を生み出してきたサッポロビールは、今年初めてRTDの事業方針説明会を開き、大々的に新商品を発表した。フルーツビネガーを使ったストロング系チューハイの『り・ら・く・す』だ。
「ストロング系のユーザーといえば男性ばかりかと思われがちですが、実はRTDを飲んでいる女性の4人に1人がストロング系も飲んでいるというデータがあります。忙しく働く女性が増えて、短い時間でリラックスしたいと高アルコールRTDのニーズはあるのですが、自分向きだと思うストロング系がないと話す女性も多くいます。
り・ら・く・すは、果汁を原料に酢酸発酵させたフルーツビネガーを使い、女性に好まれるやさしい味わいにしながらも、アルコール度数を8%に高めても飲みやすさを追求するため、3年の開発期間を要しました」(サッポロビール・新価値開発部の寶麻実さん)
サッポロは新しい果汁感と高アルコールを両立させた新ブランドを引っ提げ、“驚きをカタチに”というRTDの事業方針を一層強化していく構えだ。
そして、一昨年の『もぎたて』や、昨年の『ウィルキンソン・ハード』などで遅ればせながらRTD市場に本格参戦したアサヒビールは、果汁感を前面に打ち出した『贅沢搾り』を3月下旬に投入する。
「平野伸一社長が強調していたのは、市場は高アルコールジャンルだけでなく、レギュラー商品も5年連続で伸長しているということ。そこで、アサヒはより果汁量が求められる“ど真ん中”のレギュラーRTDで勝負すると意気込んでいます。
この贅沢搾りがキリンの本搾り、サントリーのこくしぼりに対抗する“絞り3兄弟”になれるかどうか。主力のビール『スーパードライ』の販売が減っているアサヒだけに、RTD市場では何とかサントリー、キリンの独壇場にストップをかけ、シェア争いに割って入りたいところでしょう」(『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏)