東京・九段の靖国神社で2013年から宮司を務めていた徳川康久氏が、2月末に退任した。この人事が、神社界で波紋を呼んでいる。
「徳川宮司は現在69歳。75歳を通常の定年とする靖国神社の宮司が、それ以前に退任するのはきわめて異例です」(神社関係者)
退任理由は「一身上の都合」とされているが、徳川氏については、“独自の歴史観”が問題視されていた。
靖国神社は戊辰戦争で亡くなった官軍の兵士を祀るために創建された神社だが、徳川氏は最後の将軍・徳川慶喜の曽孫で、“賊軍”の末裔に当たる。
そこで過去のインタビューでは、「私は賊軍、官軍ではなく、東軍、西軍と言っている。幕府軍や会津軍も日本のことを考えていた」(共同通信)と発言。その後、亀井静香・元衆院議員らによって「西郷隆盛や白虎隊などの賊軍を靖国神社に合祀する運動」が起きるきっかけとなった。
著書『靖国神社が消える日』(小学館刊)で徳川氏の発言を批判した宮澤佳廣氏(靖国神社の元総務部長)はこう語る。
「徳川氏の賊軍合祀に対する態度は靖国神社の存在意義を揺るがすもので、神社内外で問題視する声は多かった。ただし、それはご本人の信念だったはずなのに、なぜ何の説明もなく辞めてしまうのか。来年は神社創建150年で記念行事計画も進んでいたのに、それまで放り出す形となったのは、理解できません」