2月21日、厚労省のワーキンググループは高齢者に適正に医薬品を使うための初の指針案をまとめた。指針案では処方による典型的な有害事象や原因薬剤を例示し、国が「減薬」を進める方向性が打ち出された。医療の現場ではすでに減薬への取り組みも始まっている。
しかし、1つの薬の量や回数を減らせても、年を重ねるごとに持病が増え、放っておくと薬の種類が膨れ上がる。これをどう減らすかが高齢者にとって一番の課題だ。
とくに肝機能や腎機能の低下する高齢者が多くの種類の薬を服用すると、薬効が出すぎて重い副作用が生じるケースがある。
都内に住む福山義男さん(76・仮名)は、高血圧と糖尿病の持病を抱え、降圧剤3種類、糖尿病治療薬3種類の計6種を10年前から服用する。2年前に狭心症を患ってからは抗血小板薬や睡眠薬など4種類の薬が加わったうえ、胃腸薬や整腸薬も増え、計13種類の薬を常用するようになった。
昨秋、突然唾液が出にくくなったので受診すると、「多剤併用による唾液の分泌障害です。味覚を失うとともに菌が肺に侵入し、肺炎による命の危険があります」と医師から告げられた。
「医師の指導のもと睡眠薬、胃腸薬、降圧剤を中心に6種類まで薬を減らして2か月すると、ようやく食事の味が回復しました」(福山さん)