「物忘れ」と「認知症」、この二つはどうやって見分ければよいのか──。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、簡単にチェックする方法を紹介する。「チューリップテスト」という方法を知っておこう。
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年齢とともに「あれ、あれ」が増えてくる。もしや、認知症ではと不安になる人もいるかもしれない。だが、認知症は単なる物忘れとは異なる。加齢が原因して起こる物忘れは、体験の一部だけを思い出せないが、認知症の場合は体験自体が思い出せない。
認知症かどうか、簡単にチェックする方法がある。チューリップテストだ。
まず、手をバンとたたいて、親指と小指と手首をつけてチューリップの形をつくる。次に、いったん手を放して、手を回転させ、右手の親指と左手の小指をつける。
この動きを患者さんの目の前でやって見せ、患者さんにもやってみてくださいと促す。認知症の人はチューリップの形はできても、手を回転させる動きができないことが多い。できない人がすべて認知症ではないが、空間認知能力が低下している可能性が高い。
つまり認知症は、記憶障害だけでなく、空間認知能力や物ごとを実行する機能などがうまく働かなくなる障害なのだ。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『人間の値打ち』『忖度バカ』。
※週刊ポスト2018年3月16日号