去る2月末時点で、店舗数が2万260店を数えたセブン‐イレブン。漸減傾向の郵便局の数が2万4000弱だから、いまの出店ペースなら東京五輪イヤーの2020年中に郵便局数を上回るだろう。
その圧倒的な数の力を背景に、セブン‐イレブン・ジャパン(以下SEJ)の古屋一樹社長は「セブン‐イレブンはもはや、社会インフラというよりライフラインそのものだ」としたうえで、「当社のキャッチフレーズである“近くて便利”も、近いのは物理的なことだけでなく、心理的な距離感の近さ、便利も使い勝手がいいだけでなく頼りになる存在へと変貌してきている」と語った。
そして2万店突破を機に、改めて経営方針や商品政策についての説明会を2月28日に行ったのだが、印象的だったのは、これからセブン‐イレブンも本格的に“健康軸”にフォーカスした商品戦略を展開するという点だ。
SEJの調べでは、50歳以上のセブン‐イレブン利用者が、2009年度は28.0%だったものが、2016年度には40.3%まで上昇しており、女性の利用比率も2016年度で47.4%に上っているという。このため、2009年度から2016年度までの商品カテゴリー別伸長率で、最も高い伸びを示したのがカット野菜などの生活デイリー品、次いで冷凍食品だった。
SEJ側がデータの起点として用いた2009年度といえば、前年にリーマンショックがあり、2011年には東日本大震災がありと、数年の間に国民の嗜好や人生観などが大きく変わる出来事があった時期。そこに少子高齢化や女性の社会進出の加速が加わり、かつてのような「コンビニと言えば若者、それも男性客が味の濃い商品をがっつり買う」といったイメージはすっかり過去のものとなった。
そこで、コンビニ大手各社も否応なく、健康を意識した商品やサービス展開を強化することになる。
たとえばローソンは2013年秋、それまでの「マチのほっとステーション」というキャッチフレーズから「マチの健康ステーション」に変更することを表明。特に同社は2000年代初頭から健康志向に振った「ナチュラルローソン」を展開し、病院内コンビニでもシェアが高かった。
個別アイテムで見ると、小麦ふすまを使用した糖質カットのヒット商品「ブランパン」など、個別の健康関連商品群では一定の成果を上げているものの、ナチュラルローソンの当初の目標出店数などに照らすとほど遠い水準。
また、2013年秋当時の経営陣は「健康分野はコンビニにとってレッドオーシャン(過当競争)ではなくブルーオーシャン(未開拓市場)だ」としていたが、それから4年半、すでにレッドオーシャンになりつつあり、ローソンが掲げた健康コンビニの優位性はかつてほどではない。