昨秋、韓国紙は文在寅大統領が過去の「ベトナム大虐殺」を謝罪したと報じた(韓国「中央日報」2017年11月15日付)。謝罪の中で文在寅は「韓国はベトナムに『心の負債(心の借り)』があります」と述べたという。ベトナムの被害者たちに、文氏の“謝罪”はどう受け止められたのか。フォトジャーナリストの村山康文氏が、現地から報告する。
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「文大統領が誰かを知らないし、謝ったことも知らない。しかし、韓国軍がベトナムで罪もない民間人を虐殺したのだから、謝罪するのは当然のことだ。それにしても、『心の借り』とは何のことか。そんな表現では到底納得できない。韓国とベトナムの文化交流や経済発展のための活動が大事だというなら、それ以前に過去のあやまちを謝罪してもらわない限り、韓国のことは許せない」
ベトナム中部フーイエン省の省都・トゥイホアから北に約30km。トゥイアン県アンニンタイ村のギア市場で出会ったレ・ヴァン・チェンさん(72歳)は、韓国への思いをそう吐き出した。チェンさんの言う、韓国が犯した「過去のあやまち」とは何を指すのか。
ベトナム戦争に参戦した韓国軍は、ここフーイエン省を含むベトナム中部の沿岸部(国道1号線沿い)を中心に駐屯した。1965年10月、韓国軍は本格的に戦闘部隊の投入を開始した。
間もなく、悲劇の幕が開く。ベトナム中部のいたる所で、「ゲリラ掃討」を名目に、韓国軍による民間人虐殺事件が起きたのだ。韓国軍が撤退する73年までの間、虐殺現場は広範囲にわたり、犠牲者の数は1万人近くに及ぶとされる。
チェンさんは、韓国軍による虐殺を逃れ、生き延びた一人。その時の様子をこう証言した。 「市場を韓国軍が襲ったのは夕食をとった後の夜8時頃のこと。突然、辺りに銃声や叫び声がこだまし、怖くて家から出られなかった」