1960~70年代、日本ではヌードグラビアの掲載された雑誌『実話雑誌』が、男たちを熱狂させていた。そんな時代に密かに紳士たちの間で流行していたのが「ヌードダイアリー」だ。ノンフィクション作家の本橋信宏氏が語る。
「まだエロ本が貴重な時代に、持ち歩けるエロ本として生まれたのがヌードダイアリーです。カバーには女性の裸が写っていましたが、それを外すと普通の手帳のように見えます。ヌード写真のほか、ナンパスポットや性の知識に関する読み物が充実していた。一応、手帳の機能も備わっていました」
例えば、「じょうずに浮気を楽しむ秘訣」というページには、「浮気相手に格好つけて渡した名刺が命取りになる」や、「浮気相手と行った宿泊先に書く住所はでたらめを書け」など、浮気バレ防止の注意事項がずらりと書かれている。この“エロ手帳”はどのような経緯で制作されたのだろうか。
「ヌードダイアリーを作っていたのは、主に東京三世社とあまとりあ社という2つの出版社でした。東京三世社の長倉健次元編集長によれば、手帳には同社発行の『実話雑誌』で撮影した写真を再掲載していたようです。どれも約1万部程度刷っていて、ラブホテルや大人のおもちゃ店で1000円前後で売られていた。両社の商品は似ていましたが、あまとりあ社のものは医学的な内容が多かったようですね」(同前)
当時の性風俗を伝えるこの貴重な資料を大量に保管する書店が存在する。東京・吉原にある遊郭書物の専門店「カストリ書房」である。渡辺豪店長が言う。
「当時はかなり出回っていたと思いますが、いまはほとんど現存しません。昨年、ある古書店を通して11冊を手に入れたのですが、やはり非常に面白い」