2011年3月11日の東日本大震災が発生して今年で7年。震災後、防災グッズや災害時に役立つ本などが続々と登場したが、実は、震災前、まだ世間の防災意識が低い頃から、岩手県のとある広告制作会社で、ユニークな防災グッズを販売していた。見て、使って、学べる『防災拭い』とは?
岩手県にある広告制作会社クワンは広告のデザインや地域の特産品をモチーフにした手ぬぐいや布巾といったオリジナル商品を企画・製造・販売している。そんな中、クワンへ岩手県の民放局から「防災ハンドブック」の制作依頼があった。このハンドブック制作をきっかけに防災の大切さを実感。防災に役立つ情報をいつでも携行できるものを作れないか?と思い、以前から自社で作り続けていた手ぬぐいを使った『防災拭い』の開発が始まった。
手ぬぐいにすることで、常に持ち運ぶことができる。また、包帯やマスクの代わりになるなど、利便性が高い。そこで、通常の手ぬぐいより10cm長くし、さらに子供や高齢者でもわかるようイラストで防災情報を掲載した。
2005年、備えておきたい防災グッズを書いた「防災グッズ編」と、地震が起きた際の知識を書いた「地震編」を発売。しかし、当時は防災に対する意識が低く、取り扱ってくれる店が少なかった。いろいろな店舗を回る中、東急ハンズ新宿店へ出向いたところ、面白い商品だと受け入れられ、取り扱いが開始。『防災拭い』を全国へ伝える場所を設けることができた。
発売から1年後、掲載内容をより確実な情報にするため、津波研究の権威・東北大学の今村文彦教授に「防災グッズ編」と「地震編」の監修を受け、津波から避難する際の知識を書いた「津波編」が誕生。
今村教授の講演や、東急ハンズから徐々に口コミで広がった。東日本大震災後、世間の防災意識が高まったことで問い合わせが殺到。販売当初は1年間で50枚しか売れなかったが、現在は累計25万枚を突破する大ヒット商品となった。岩手県宮古市にある『防災拭い』を扱っていた道の駅のかたからは「『防災拭い』を日頃から見ていたため、大震災の際も慌てることなく次の行動に移ることができ、全員避難することができた」との声があったという。
2018年には、熊本地震後、熊本出身のデザイナーユニット「ふくろうデザイン」と共同で企画した『防災拭い 防災グッズ編 くまモン版』を本格始動。監修は東北大学・災害科学国際研究所の保田真理氏に依頼し、売上金の一部を義援金として寄付する予定だ。
くまモン版の発売以降は若い人たちにも手に取ってもらえるようになり、幅広い世代の人に防災知識を伝えている。「防災意識を高めてもらえるよう親しみやすいデザインにし、より多くの人に伝えていきたい」と社長の小野公司さん。今後は高齢者や、乳幼児のいる家庭へ向けた『防災拭い』を計画中だ。価格も手頃で、家族で学べる『防災拭い』。ぜひ手に取ってみてほしい。
※女性セブン2018年3月22日号