会社を経営している人の中には、家族を従業員として雇っているケースも多いだろう。離婚した妻が会社の経理を担当している場合、「都合が悪い」という理由で解雇することはできるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
先月、10年間連れ添った妻と協議離婚。問題なのは元妻が私の経営する代理店の経理を担当していることです。離婚後も会社の内情を彼女に知られるのは嫌ですし、なにより別れたのに会社で顔を合わせるのは辛いものがあります。このような場合、社長の権限で強引に彼女を解雇してもよいでしょうか。
【回答】
会社は従業員と雇用契約を締結しています。この雇用契約を会社から終了させるのが「解雇」ですが、解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」です。
そこであなたが元妻を辞めさせることができるかは、元妻との関係が「雇用契約」であるのか、「雇用契約」であるとした場合に、解雇に客観的な合理的理由があり、解雇が社会通念上相当と認められるかが問題になります。
まず、元妻が雇用契約の労働者といえるかです。法律上の労働者とは使用者による指揮監督下において労務を提供し、当該労務提供の対価(賃金)を受ける者をいうと解されます。元妻が会社事務所に出勤し、社長である元夫の指示を受けて経理業務を行ない、月給をもらう関係だと雇用契約です。