安倍政権が目玉政策に据える「働き方改革」では、これまで原則禁止だった「副業・兼業」の解禁が謳われている。定年後の生活防衛のため、現役時代から本業以外で稼ぐのも一つの手段ではある。しかし、この“官製ムーブメント”に安易に乗ってはいけない、と大前研一氏は警鐘を鳴らす。
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「働き方改革を断行いたします」「戦後の労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革であります」
安倍晋三首相は今国会の施政方針演説で、こう大見得を切った。
しかし、真の「働き方改革」を断行したら、日本は“大失業時代”が到来して悲惨な結果になる。なぜか? 日本企業が成長するために働き方改革をするのであれば、最初にやるべきは、直接的には会社の業績(売り上げ・利益)に結びつかない人事、総務、経理などホワイトカラーの間接業務を見直すことだからだ。
そもそも仕事には会社の業績に直接結びつく製造、開発、営業、販売などの直接業務と、それをサポートする間接業務がある。私が新著『個人が企業を強くする』(小学館)でも詳述したように、日本企業の場合、国内では直接業務の中の製造部門(ブルーカラー)は、人員やコスト面の比率が非常に低くなっている。作業の自動化やロボット化が進んだ上、今や多くのメーカーが工場を海外に移したからだ。
ところが、製造部門をサポートしていた間接業務の人員は国内にそのまま残っているため、その分野のホワイトカラーが過剰になっている。したがって真の「働き方改革」をやると、間接業務のうちのデータ入力や伝票整理、記帳、請求書作成など作業内容に一定のパターンがある「定型業務」は、生産性を上げるためにAI(人工知能)やロボット、ICT(情報通信技術)に置き換えていかざるを得ない。残るのは、クリエイティブな仕事をする「非定型業務」の部門だけである。つまり、定型業務をやっていたホワイトカラーが大量に失業することになるわけだ。