ビジネス

あの車両が異国で活躍 日本の中古鉄道が世界で人気の理由

インドネシアを走る「津田沼」行き表示の元東京メトロ東西線05系電車(2012年1月20日撮影)

 近年、日本の優れた鉄道技術が輸出され、途上国のインフラ整備に大きな役割を果たしている。背景にあるのは、戦後の経済復興、高度成長期に製造された車両の“世代交代”だ。

 1950~70年代に登場した車両は性能を向上させた新車両に入れ替わり、現役を引退した中古電車は海外に、無償に近い価格で譲渡された。これまで海を渡った車両は1100を超え、アジア諸国を中心に多くの人々の生活を支えている。世界各国の鉄道を撮る写真家で、鉄道史研究家でもある白川淳氏が解説する。

「日本国内の安全基準が厳しいことから、整備・維持費用を考えると、数十年走らせた後は省エネの新車と置き換えた方が安いという事情があります。一方、日本製の車両は頑丈で、丁寧に保守管理されているので、まだまだ走ることができる。途上国では、1両数億円の新車両よりも、輸送費を負担する程度の金額で手に入る中古車両のニーズが高い。ODA(政府開発援助)の一環で日本政府が輸送費を負担することもあります」

 日本の鉄道会社にとっても、1両の廃車につき数百万円の費用がかかるため、タダ同然でも引き取ってもらった方が有難い。相互利益の関係が成り立っている。これまでインドネシアやミャンマーなどに600両以上の車両を譲渡したJR東日本は、「2020年までに、あと336両をインドネシアへ送る予定」(広報部)という。東京メトロは1995年からアルゼンチンに131両、インドネシアへは400両を譲渡した。ほかにも伊勢鉄道、名古屋鉄道など、多くの鉄道会社が鉄道車両を送り出している。

 だが、日本の車両が人気の理由は安さや丈夫さだけではない。

「レールの幅は世界標準が1435ミリですが、日本は狭くて1067ミリ。東南アジア諸国は日本と同じか、1000ミリなので、あまり手をかけずに日本製車両を導入できます。最近の車両は電子部品などに最新技術が使われていて複雑ですが、昔の車両は造りがシンプル。保守のしやすさからも海外で好まれています」(前出・白川氏)

関連記事

トピックス

打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン