SNSから生まれた漫画本がブームになっている。いま、書店の漫画コーナーに高く平積みされている3作品、『おじさまと猫』(桜井海・著/スクウェア・エニックス)、『パティシエさんとお嬢さん』(銀泥・著/一迅社)、そして『こぐまのケーキ屋さん』(カメントツ・著/小学館)はいずれも“SNS発漫画本”だ。
著者自身のSNS上で作品を発表したものが話題となり、書籍化。SNSを見れば作品はタダで読めるが、発売後にすぐ増刷となるほどの人気だ。SNS発の漫画はもちろん他にもあるが、この3作品が特に売れているのは、なぜか。
3作品に共通するテーマが、「癒やし」だ。『おじさまと猫』は、売れ残った猫と、それを引き取った男性の心温まる物語。『パティシエさんとお嬢さん』は、名前も知らない客に恋をしたパティシエのラブコメ。そして『こぐまのケーキ屋さん』は、こぐま店長と、人間の店員の可愛いやりとりを綴った4コマ漫画。
どの作品も、寄せられた感想には「疲れているときに読むと、元気になれる」「心の支えになる」といったものが多い。登場人物たちの姿が心のサプリメントになっているようだ。また、1話が短く、手軽に読めることも受け入れられた理由と言えるだろう。
例えば『こぐまのケーキ屋さん』は、著者のカメントツ氏が疲れた友人を癒やすために描いた4コマ漫画。それを自身のTwitterで公開したところ、たちまち数多くリツイートされ、公開後6日で書籍化が決定した。発売後すぐに重版となり、すでに15万部を記録する売れ行きだ。作品に登場するこぐまのグッズ商品も発売され、東京・渋谷ではコラボカフェが開かれるなど、SNSの枠を飛び出して社会現象になりつつある。
著者のカメントツ氏は、「インターネットにより個人の発信力が大きくなった時代だと実感します。面白くもびっくりな不思議な気持ちです」と語る。
SNSでは、時に誹謗中傷が飛び交うこともあり、「SNS疲れ」という言葉まで出てきた。そのような中で「毒」のない癒やしを求める人が多くなっているのだろう。