幕が下り、カーテンコールを待つ客席に突如姿を現したのは、かのセバスチャン。『アンダー・ザ・シー』を歌いながら、再びステージに上がるとピンク、ブルー、イエローといった色鮮やかな人魚たちに加えて、ヒロイン・アリエルとエリック王子も登場。とびっきりの笑顔で観客に手を振ると、観客は総立ちで割れるような拍手を送った。
「永きにわたり作品を育んでくださったすべての皆様に、出演者、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。これからも作品の感動をお届けできますよう、1回1回の舞台を精一杯務めてまいります」
3月3日、劇団四季ディズニーミュージカル『リトルマーメイド』は博多キャナルシティ劇場にて日本公演通算2000回を迎え、終演後、特別カーテンコールが行われ、エリック役の竹内一樹がこう謝意を述べた。このカーテンコールは歓声に応えるように6回も続いた。
『リトルマーメイド』は、『美女と野獣』(1995年)、『ライオンキング』(1998年)などに続くディズニーミュージカル。人魚姫のアリエルが人間の王子さまに恋をして、陸の上での幸せな生活を夢見る物語だ。同作品福岡公演の舞台監督・小野崎統子さんが解説する。
「アリエルが暮らす海の中は、照明や小道具を使って、海特有の揺らぎやキラキラとした光を出しています。また人魚が海中を泳ぎ回る演出のために、フライング技術を駆使しています。たった2本のワイヤーで俳優を吊り上げ、最新のコンピュータープログラムで上下・左右と動かして、自然な泳ぎを体現することで、壮大な海中を演出できるのです」
世界中で上演されてきた『リトルマーメイド』。劇団四季ならではの工夫も施している。
「カラフルな海の仲間たちが陽気に『アンダー・ザ・シー』を歌うシーンでは、海外版よりパペット(人形)を増やして、より華やかなシーンに仕上げています。現在上演中の福岡と名古屋では種類の違うパペットが3体ずつ登場しています」(小野崎さん)
女性セブンは冒頭の2000回公演の取材を特別に許されたため、舞台裏にも潜入した。13時の開演を控えて、10時半には出演者たちが稽古場に集まる。約1時間かけてバレエ・呼吸・発声のウオーミングアップを入念に行う。節目の公演ということもあってか、出演者たちの表情は真剣そのもので、ピリッと締まった雰囲気が漂っている。
同じ頃、出演者同様忙しく動き回っていたのが舞台スタッフたちだ。アリエルの美しい尾ひれにアイロンをかけていたのは、衣裳担当チーフの竹井ゆかりさんだ。