ベトナム戦争に参戦した韓国軍は、1万人以上の民間人を虐殺したとされる。近年、批判の声が高まる中、昨秋、韓国紙は文在寅大統領が過去の「ベトナム大虐殺」を謝罪したと報じた(韓国「中央日報」2017年11月15日付)。ベトナムの被害者たちに、文氏の“謝罪”はどう受け止められたのか。フォトジャーナリストの村山康文氏が現地から報告する。
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昨年11月。東南アジア歴訪中の文在寅大統領はAPEC首脳会談に出席するため、就任後初めてベトナムを訪れた。韓国紙中央日報は、その時のある「事実」について、こう書いた。
〈文大統領が過去韓国の「ベトナム戦派兵」に対してベトナムの国民に謝罪をした〉〈(文大統領は)「韓国はベトナムに『心の負債(心の借り)』があります」と述べた〉〈「心の負債」という言葉はかつてベトナム戦派兵の過程で発生した民間人の虐殺などに対する謝罪の意味という〉(2017年11月15日付)
中央日報は、文大統領が「心の負債」という婉曲表現を用いて「ベトナムの国民に謝罪」したと報じている。しかし、現地で虐殺事件の生き残りや一般市民、メディア関係者に話を聞くと、韓国が謝罪した事実は誰も認識していなかった(文氏を知らないベトナム市民も多い)。
これまで韓国政府は、ベトナムでの虐殺事件について、まともな謝罪はもちろん、被害者に向き合う姿勢を示してはこなかった。そうした姿勢を転換し、大統領自らベトナムで謝罪したなら、画期的な出来事のはずだ。ベトナムでも大きく報じられて然るべきビッグニュースである。