2015年に創立100周年を迎えた佐賀県下屈指の進学校・伊万里高校は、秋の県大会で佐賀商や佐賀北という全国制覇のある強豪校を撃破し、“伊万里旋風”で67年ぶりに九州大会出場。地道な地域貢献も評価され、21世紀枠でセンバツ切符を手にした。3月26日に、大会屈指の注目校・大阪桐蔭と相対する。日本唯一のアマチュア球児向けフリーマガジン「サムライベースボール」発行人の古内義明氏が、春夏通じて初めて甲子園に臨む吉原彰宏監督に、甲子園での秘策を訊いた。
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──「甲子園出場」という吉報を聞いた瞬間の感想は?
吉原監督:生徒は授業中で、私は校長室の隣にある事務室にいましたが、吉報の電話よりネット速報の方が何秒か先でした(笑)。控室にいた保護者の大歓声で、生徒たちも分かったようです。21世紀枠は選ばれるかどうかかも、分かりませんし、どっちに転んでもおかしくないわけですから、あまり期待せずに半信半疑くらいの気持ちで待っていました。
──陶器の町・伊万里市も大変な盛り上がりみたいですね?
吉原監督:創立1916年の古い学校で初出場なので(笑)。いまいる教職員は他校でもほとんど経験がないので、何をやっていいかも分からないし、甲子園がどういうものかも把握できていなかったですね。
──佐賀県勢のセンバツ出場は2007年の小城以来という全国最長ブランクでした。
吉原監督:伊万里地区からは、2006年春に伊万里商、2009年夏に伊万里農林が出ていて、公立ではうちだけでしたね。佐賀県は41校が5地区に分かれ、いま勢力図が分散傾向で、これまで半分ぐらいの学校が出ているので、5割の確率で甲子園に出場しています。逆に言えば、(実力が)分散する分どこが行ってもおかしくないですが、その中で秋の九州大会で勝つとなると、何校かに集まって引っ張った方が佐賀県のレベル自体も上がるのではないのかなと思います。でも、これは難しい問題でもありますね。
──地元の有力選手の県外流出は激しいですか?
吉原監督:この地区で普通校はうちしかなく、あとは実業系の学校で、どこも定員割れです。トップクラスの実力のある中学生が福岡や大分の強豪校に流出するのが一番痛いです。
──伊万里市が始めた「『目指せ!甲子園』プロジェクトチーム」はどんなものですか?
吉原監督:伊万里高校OBの塚部芳和市長が伊万里地区から甲子園に出ることで、町全体を盛り上げようと始まったプロジェクトです。地域の活性化として、どこかの高校が甲子園に行けば、町が活気づくので、高校野球に特化して始めました。毎年2月には地元企業の協力で、西部ガス(福岡市)から講師を招いて、中学生の野球教室を実施しています。また、野球部としては、唐津の少年野球大会に審判ボランティアとして参加することで、地元の野球が拡大すればいいと考えています。