ドラマファンにとってこの冬は見所の多いクールだったに違いない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が総括した。
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今期のドラマも次々に幕を閉じました。前評判に対して、放送された後のギャップはいかに? 事前の注目度と視聴者の反応に、差があったのか無かったのか? 下馬評の高かった3つのドラマを振り返ると……。
●『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)
SMAP解散のタイミングもあり、まず視線が集中したのが木村拓哉主演のドラマ『BG~身辺警護人~』。キムタクが演じたのは身辺警護人=ボディガードの島崎章。民間の日ノ出警備保障に所属しチームメンバーと共にさまざまな人の警護を担当、危機一髪を乗り越えていく、という一話完結型に近い物語でした。
キムタクは40半ばの中年にして軽やかな身のこなし、アクションシーンもあり。一方、冒頭から失敗エピソードも盛り込まれるなど人間臭さを演出。息子に受け入れてもらえない、ちょいダメ親父像も見え隠れしましたが、しかし全体としてやはり「キムタク」。想定内のヒーローに留まり新鮮味に欠けた。
ふと、このドラマが「コント」に見えてしまったという人は、はたして私だけでしょうか? いったいなぜ、コントに見えてしまったのか、その理由を考えてみるに……。
例えば、元自衛官という同僚BGの高梨雅也(斎藤工)は、髪の毛がウエーブしている。襟足を伸ばしている。ヤサ男役ならばいい。けれど、「警護人」ならやはり短髪が基本ではないでしょうか? 趣味やファッション性を抑え、できるだけ個性や気配を「消す」のが警護の仕事のはず。とっくみあいになった時、長髪は敵から掴まれるリスクあり、とケンカが得意な人も指摘していた。
同じく日ノ出警備保障の菅沼まゆ(菜々緒)も、化粧濃すぎ。つけまつげが長くて唇が真っ赤で目立ちすぎ。警護に徹するためにはできるだけ悪目立ちする装いを避けるのがプロ。
つまり、細部のリアリティに欠けていた。地に足がついていなかった。詰めが甘いがため小芝居っぽい感じが漂っていたのかもしれません。もはやキムタク以前の問題かも。
そもそも「コント(conte)」とは仏語で「短い物語・童話・寸劇」が語源。短い時間に完結する、笑いを目的とする寸劇です。簡単な衣装や小道具を使って、一瞬だけ違う空間を出現させるのもコントの役割。劇の間に挿入したりし転換を進めていく。だから、コントは場面場面を楽しめばいい。
その意味でも、コント的だったかも。キムタクの復帰ぶりを「チラ見」「ながら見」するのには的確だったのかもしれません。