物語の舞台を薩摩から江戸に移したNHK大河『西郷どん』。幕末のスペクタクルや登場人物たちの恋愛模様とともにシビアなお金の話が描き出されている。
薩摩藩といえば「サツマイモ」が名産であり、劇中でも貧乏な西郷家の食卓にはもちろん、江戸の藩邸でも藩士たちが頬張っている。銅貨“1文”は現代では20円とされるが、彼らの生活はどんなものだったのか。歴史作家の井手窪剛氏が解説する。
「『江戸繁昌記』という当時の書物では、焼き芋がひとつ4文、つまり今の80円くらいで売られていたとあります」
同じく薩摩の名産品なのが芋焼酎。江戸への支度金を調達するべく、鈴木亮平演じる西郷吉之助(のちの隆盛)の手作りの焼酎を売りに出そうとする場面もあった。
「清酒の名酒が一升で300文(=6000円)程度に対し、焼酎は500~800文(=1万~1万6000円)だった。アルコール度数の高い焼酎のほうが高価だったようです」(同前)
物語の序盤では、子供時代の吉之助が川でうなぎを獲る姿が描かれた。仕事帰りの吉之助に、家族が“晩ご飯のおかずに獲ってきて”と頼むシーンもある。現代では高騰するうなぎも当時は安かったのか?
井手窪氏によると、江戸では1串16文(=320円)、鰻丼になると100文(=2000円)で売られていたという。現代ほどではないにせよ、安くはない。それを持ち帰る吉之助は、頼りにされていたことだろう。