イヌ年を迎えても猫人気は衰え知らず。ところがその陰で、老猫の介護に悩む人が増えているという。人も猫も「ご長寿時代」を迎え、室内で暮らす猫の平均寿命は現在約15才。かつて猫は外で姿を隠して寿命を終えたが、いまや室内暮らしで「死に場所を選べない」時代になった。身近で猫が老いを迎えたら、どうつき合い、介護していったらいいのだろうか?
そこで、『猫の學校2 老猫専科』(ポプラ社)の著者で、5万匹以上の猫をお世話してきたキャットシッター歴25年の「猫のプロ」、南里秀子さんにインタビュー。たくさんの猫と暮らし、17匹の猫を看取ってきた南里さんに、老いの兆候や猫の認知症への対処法、ペットロスから回復する方法などについて聞いた。【全2回・後編】
──老猫になると性格的なものとかいろいろ変わるということですが…
南里:年とともに変わってくるので、今の状態だけでこういう猫だからと決めつけないでほしいんです。老猫になると感覚が衰えたり、体力的なことから性格、食の好みも変わってきます。最期の瞬間まで日々変わり続けるので、老猫とのつきあい方もその都度、柔軟に変えていくことが必要です。昨日まで食べていたものをパタッと食べなくなったりするので、猫に振り回されているように感じる方もいますが、それはもう受け入れるしかないんです。
──老いの兆候は、どんなふうに現れますか?
南里:たくさん食べているのに痩せて背骨がゴツゴツしてきたり、1日の大半を眠っていたり、よろけたり動作が緩慢になるなどですね。徘徊や夜鳴きをするようにもなりますし、目が見えなくなったり、歯が抜けるなどの身体的症状も生じてきます。
──猫も認知症になるとは知りませんでした。
南里:猫の医学にも認知症の項目はあって、夜鳴きや徘徊として表れると言われています。徘徊は、聴覚や嗅覚が衰えて、今まで入ってきていた情報が減ることで不安になって鳴くという説もあります。「アオーン、アオーン」とびっくりするような大声で鳴くこともありますが、慌てずに「どうしたの?」と話しかけると、ひとりではないことに気づいて普段の鳴き声に戻ります。
──それでも猫は体の機能低下を受け入れていくと…
南里:猫はたとえ老いて目が見えなくなっても、それを嘆いたりせず受け入れていきます。それが猫のいいところです。そうやって猫は衰えを受け入れていきますが、人間側はどうしても元に戻したいとコントロールしようとするから、互いの思いが掛け違ってしまうんですね。これまでたくさんの看取りを経てきて思うのは、治療だけが目的となってQOLへの配慮がないと、猫はただ苦しい毎日となってしまうんじゃないかということです。