食べ物の嗜好は地域性に左右されるもの。意外に見える取り合わせにも「理由」はある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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全国の「食」の傾向を総務省の家計調査(総世帯)に照らして見ていくと、時代によって移り変わるものもあれば、それほど地域格差が変わらないものがある。例えば、食肉における豚や鶏への出費は増えているものの「西の牛、東の豚」や納豆における「東高西低」といった趨勢が変わらない食べ物もある。「食」は地域の風土や歴史に深く関わっている。
その傾向は「カップ麺」や「即席麺」といった、この数十年で出現した食べ物からも見て取れる。実は家計調査の項目のなかでも、この2項目は「温かい汁物」の嗜好を見るのに適している。麺のなかでも「乾うどん・そば」などは冷やして食べる地域も多い。「乾燥スープ」という項目もあるが、年によって上位の入れ替わりも多く、地域格差がそれほど顕著ではない。
そんななか「カップ麺」「即席麺」はなぜか「北」が圧倒的に強いのだ。今年のカップ麺への支出額のトップは5456円(即席麺1526円)の青森市。もはや首席が定位置とも言える存在で毎年のようにトップ、もしくはトップ争いに加わっている。
今年の上位は大接戦で2位は5301円(同1631円)の秋田市、3位5297円(同1429円)の新潟市となっているが、上位はカップ麺と即席麺の合計支出でも1~3位の序列は変わらない。
家計調査の他の項目で見ると、青森市民は「外食」にかける費用が年額平均8万6617円と、全国で唯一二桁を切っている。全国でもっとも外食費の多い川崎市の27万2902円のおよそ3分の1だ。
実は「外食」と「カップ麺」という項目には負の相関関係がうかがえる。カップ麺部門2位の秋田市の「外食」に充てる支出は10万4068円、3位の新潟市も10万3961円。「カップ麺」の支出における上位ベスト3は、「外食」に対しては支出の少ない“逆ベスト3”とも言える出費の控えようだ。