富裕層男性たちが、夜な夜な港区界隈で開いている豪華なパーティー。中でも「男性は社長限定」で開催されている「社長祭」なる飲み会があるという。“祭”に参加したことのある現役港区女子の吉川リサコ氏が、そこで繰り広げられた男と女の駆け引きをリポートする。
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「社長祭」という飲み会だかパーティーだかに呼ばれたときのことである。そのダサすぎるネーミングの通り、社長交流会のようなパーティーだった。私はまだ当時21歳。女子大生。男性たちはみな、IT系など成長企業の社長だという。
女子は、知り合いを通じて「ご飯無料だし、出会いもあるよ」なんていう誘い文句でバラバラの環境から呼ばれた子たちである。
港区の某タワーマンションの広い一室に、生ハムメロンやシャンパン、キッシュにチーズ、ドライフルーツなどがズラリと並んでいた。立食パーティーである。
女子大生の私は、男性陣を見てもピンと来なくて、生ハムメロンに狙いを定めた。私を呼んでくれた人材派遣会社を経営するショウタは、当時42歳。顔はさまぁ~ずの三村をダンディにした感じだろうか。
彼は私や私の友人たちに優しかった。暇なときに何人かで会っては、「お腹が空いた!」と騒ぐ私たちを、西麻布の叙々苑游玄亭に連れて行き、たらふくご馳走してくれた。大学の友達何人かと行って、1回のお会計が10万円を超えても嫌な顔ひとつしなかった。といってそれ以上の関係を求めてくるわけでもなく、「若くてよく食べる可愛い子が好き」という気の良いおじさんであった。
ショウタはすでに仲がよかったからいいが、パーティーに来ている40~50代の男性は、いくら「社長」といえど、目の前の生ハムメロンより優先度は低かった。
生ハムメロンにフォークを伸ばすと、地方で温泉施設を経営しているという45歳のカンタが話しかけてきた。目を見開き、名刺を差し出しながら、早口で自己紹介する。「このへん、行ったことある? ここで俺、温泉施設やってるの」「年商ン億円あってね~」──空気を読まず、ひたすらトークを展開するタイプの、ちょっとクセの強い感じであった。
私は愛想笑いをして、生ハムメロンを食べ続けた。
「食欲旺盛でいいなあ」「僕、こう見えて結婚してて、奥さんいて子供3人。地元には愛人もいて、東京で愛人探してるの」
「僕の愛人になったら、温泉タダだよ、スパもタダ。サウナもタダ」
あんまり惹かれない特典に、私の生ハムメロン欲は一層強まった。いくらお金に余裕があろうが、この手のタイプは何をどうしてもお断りである。
「もしかして人見知り? 恥ずかしがらないで大丈夫だよ」
なんとポジティブなのだろう。びっくりして顔を上げると、彼は前歯を全開にして、口角に泡をためていた。これでは生ハムメロンもおいしくない。