平昌五輪を機に、文在寅政権は「南北融和」を演出した。しかし、現実の北朝鮮は、金ファミリーが身内や側近を殺害する恐怖政治をやめようともしない国家だ。長年、北朝鮮について取材してきた落合信彦氏が、かつてインタビューした金正日の甥の「予言」を紹介する。
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金正恩が最高指導者になってから、北朝鮮では粛清の嵐が吹いている。2013年には叔父で後見人的存在だった張成沢が、「国家転覆陰謀行為」により処刑された。そして昨年、異母兄であり金正日の長男だった金正男をマレーシアのクアラルンプール国際空港でVXガスを吹き付けて暗殺した。
この容赦ない恐怖政治の予兆は、金正日の甥で正恩の親族である李韓永氏が私に明かした「ロイヤル・ファミリー」の実像からも感じられた。
金王朝の一族に生まれた李韓永氏はモスクワ外語大学に留学、卒業後、スイスのジュネーブに向かい、韓国に亡命した。当地で韓国の情報機関と接触、その後ソウルでインタビューした(1996年)。彼は「ロイヤル・ファミリー」について次のように述べた。
「金正日指導者は孝行息子です。かなり父親に気を使っていましたし、1976年には数千万ドルをかけて豪華な主席宮を作ってあげたりもしました。しかし、彼が正式な後継者となって指導者として全国を統制し始めてからは目に見えない葛藤があったと思います(中略)。
1970年代末から1980年の初めにかけて金正日指導者は主席宮をすぐ封鎖できるシステムを国家刑事保安部の中につくったのです(中略)。
確かにキッカケはありました。金正日指導者の指示で労働党連絡部の工作員が外国の女性を連れてきたのです。キップムジョ(悦ばせ組)はすべて朝鮮の女性ばかりでしたから飽きたのでしょうね。それについて事後報告したら金日成主席がひどく怒って金正日指導者を叱責したというのです。そして父親の信頼を失ってしまったのではないかと思い始めた。さらには父親が自分に対して何らかの措置を取るのではと疑心暗鬼に陥ってしまった。結果として主席宮を監視し、いつでも封鎖できるようなシステムを作り上げたわけです」