国内

「老人狩り」が頻発 若者たちは「心は痛まない」と言い放つ

老人の心に響く内容で契約を結ばせる詐欺グループ

 1990年代に、少年が集団で中高年男性を襲撃し、金品を奪う犯罪「おやじ狩り」が注目を集めた。近年は、若者が集団で老人から簒奪する「老人狩り」と言ってもよいような犯罪が頻発している。彼らはなぜ、老人を狙うのか。ライターの森鷹久氏が、老人をターゲットにする若者たちの本音に迫った。

 * * *
 筆者が取材したことのある「リフォーム詐欺」を行っていた男性が、5年ほど前に言い放った言葉を思い出す。

「正直、老人から金を取っても心が痛まない。俺たちには未来がある。日本の未来だって、若者にかかっている。老人は生きれば生きるほど金がかかる。その金を払っているのは若者だ。あとは死ぬだけ、という老人たちに金は必要ない」

 今年2月、千葉県茂原市で、資産家の80代女性が少年たちによって殺害された。地元では「ヤンチャ」だと名を馳せていた彼らは、警察の取り調べに対し「金目的で高齢女性が住む家に盗みに入った」と供述しており、強盗殺人容疑で逮捕されたが、被害者女性と彼らに面識はなかった。

「少年らは資産家で一人暮らしの女性宅を狙っていたようですが、顔を見られたので女性を殺害したと話すなど、犯行はずさんで場当たり的。事件後、仲間内で“なぜ殺したんだ”などと揉め事になったとも言われていて、弱い者を狙った安易で卑劣な動機が浮かび上がってきます」

 こう話すのは大手紙の事件担当記者。また、少年らを知る千葉県鴨川市在住の男性も、次のように証言する。

「改造バイクを乗り回すなどヤンチャな一面はあったが、人殺しをするほどの“悪党”ではなかった。建設作業員などの仕事をしていたはずだが、金遣いが荒く、金銭的に逼迫していたとは聞いている。そういう仲間が集まったことで気が大きくなり、後先考えず盗みに入ってしまったのではないか」

 茂原の事件で逮捕された少年らも「年寄りからは金を取っても良い」「年寄りからは奪いやすい」と身勝手に考えたのだろうか。万一、被害女性に顔を見られることなく、無事に金銭を強奪できていたとすれば、少年たちは次々に独居老人宅に狙いを定めて、第二、第三の犯行に手を染めたことも、容易に想像できる。

 冒頭で紹介した「リフォーム詐欺」に関わっていた男性。こちらも独居老人や身寄りの少ない高齢者宅を徹底的に調べ上げ、ピンポイントで訪問し、法外な価格で不必要な“床下換気扇”などの商品を売りつけていた。近しい業者の摘発が相次いだことで廃業に追い込まれたわけだが、その後も「老人」をターゲットにした商売を続けた。

「老人に響くのは、ズバリ“余生をどう過ごすか”と問うこと。老人ホームの優先入居を販売したり、葬式代を安く済ませるための共済への加入を進める、といった商売でかなり儲けた。今は下(部下)に任せて、一線からは抜けましたが、若い奴らの中には、あまり“上手くない”連中もいて、色々とトラブルを起こしていると聞いている」 この“上手くない”という表現であるが、男性がスキームを作り、今では部下に任せている老人をターゲットにした商売が“詐欺まがい”であることに他ならない証左である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

亀梨和也
亀梨和也がKAT-TUNを脱退へ 中丸と上田でグループ継続するか話し合い中、田中みな実との電撃婚の可能性も 
女性セブン
水原問題について語った井川氏
ギャンブルで106億円“溶かした”大王製紙前会長・井川意高が分析する水原一平被告(40)が囚われた“ひりひり感”「手をつけちゃいけないカネで賭けてからがスタート」【量刑言い渡し前の提言】
NEWSポストセブン
ボブスタイルにイメチェンされた佳子さま(時事通信フォト)
「ボブスタイルに大胆イメチェン」「ご両親との距離感」に垣間見える佳子さま(30)の“ストレスフリーな一人暮らし生活”
週刊ポスト
都内のマンションから緊急搬送された小島瑠璃子
「娘は大丈夫、元気です。でも…」小島瑠璃子(31)の母が明かした“困惑” 現場に居合わせた赤ちゃんは無事《夫は緊急搬送され死亡》 
NEWSポストセブン
吉田義男さん
追悼 阪神元監督・吉田義男さんが明かしていた思い「V9時代の巨人に勝てる気はしなかったが、監督として川上巨人を手本にチームづくりしたことはない」
NEWSポストセブン
都内のマンションから緊急搬送された小島瑠璃子(HPより、現在は削除ずみ)
《母親も駆けつけた緊迫の一部始終》第一発見者の小島瑠璃子も救急搬送、現場では「ドンッドンッ」と音が
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《舌、眼球を取り出して…》田村瑠奈被告の母親、遺体損壊を知りながら通報できなかった理由を語る「親としての気持ちがあった」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
都内のマンションから緊急搬送された小島瑠璃子
《小島瑠璃子が緊急搬送》夫の実業家はサウナ事業を展開「オープンしなかった…」「この半年で資本金大幅減」
NEWSポストセブン
新製品
《大騒動》秋葉原のPCショップに300人以上の転売ヤーら殺到…近接する幼稚園への侵入者に職員が「さすまた」で対応する緊迫の瞬間も
NEWSポストセブン
旧5人のメンバー。左から石崎琴美、吉田知那美、吉田夕梨花、鈴木夕湖、藤沢五月(時事通信フォト、Loco Solare)
《崖っぷちのロコ・ソラーレに新メンバー加入!》背景には3つの「切実なチーム事情」 「今季14戦で優勝ゼロ」で五輪3大会連続出場に最大の危機
NEWSポストセブン
事務所『シャシャ・コーポレイション』を40年近く支えてきた小林聡美(左)ともたいまさこ(右/時事通信フォト)
《事務所が昨年末に解散》女優の小林聡美が還暦前に独立『やっぱり猫が好き』考案の社長との別れ、盟友もたいまさこは事実上の引退へ
NEWSポストセブン
“怪演”が視聴者を驚かせ、ネットがザワついた池脇千鶴
《たるんだ頬にメガネ姿》フジドラマで中年女性役を演じる池脇千鶴「生涯ずっと女優でいたい」の怪演
NEWSポストセブン