熊本県熊本市にある京町拘置支所。時折、隙間風が入り込み、アクリル板を挟んで2人ずつ向き合うのがやっとの狭く、古めかしい面会室で、彼女の言葉はよどみなく続いた。
「私を助けるために、4500万円出してくれたある社長さんがいました。でも、そのお金も全部、ホストに貢いでしまいました」
刑務官の目を気にする素振りも見せず、言葉を紡ぐのは“つなぎ融資の女王”こと山辺節子被告(63)だ。
「大企業が資金繰りに困った際のつなぎ融資」という架空の投資話を持ちかけ、金銭を騙し取ったとして昨年4月に逮捕された。その後、詐欺罪で起訴され、被害額は8件で1億8000万円。立件は一部にとどまったが、山辺グループによる被害総額は約27億円とも報じられた。
金額以上に世間に強い印象を与えたのは、その装いだ。逃亡先のタイでの逮捕時は、松田聖子風のヘアスタイルに、両肩を露わにした白いブラウス、生足にショートパンツという出で立ち。さらに自身の年齢を38歳と偽り、30代現地男性と同棲生活を送っていた。
だが、面会時の山辺被告にその面影はなかった。黒のタートルネックと胸にリボンをあしらった青いショート丈のワンピースと、服装こそ若さを感じるものの、三つ編みにしてまとめた髪は毛先の10センチほどだけが黒く、あとは真っ白だ。