日本年金機構が2月分の年金を本来の支給額よりも少なく払っていた問題は、2007年の“消えた年金”を彷彿させ、国民の大きな怒りをかっている。
今回の原因は、所得税の控除に必要な「扶養親族等申告書」だ。機構が2018年4月からマイナンバーを利用することになったため、扶養親族等申告書の様式を変更。「書き方がわからない」と、未提出者や再提出者が続出した。そのうえ、データ入力の委託業者「SAY企画」(東京都豊島区)による入力漏れ・入力誤りが発覚。扶養親族等申告書をきちんと提出したにもかかわらず、その内容が正しく年金に反映されなかったためだ。
「同じデータを2人のパンチャーが入力。それぞれの入力結果を突き合わせ、合致させたデータを納品するという契約になっていました。しかし、SAY企画はOCR(光学式文字読み取り装置)を使って自動入力したうえに、正しく入力されているかのチェックも行っていなかったことが分かり、約528万件の納品データを機構職員で再チェックした」(日本年金機構経営企画部広報室)
そもそも、OCR入力には誤認識も多く、機構はSAY企画からスキャナーで読み取っただけの文字情報を受け取り続けてしまった。結局、機構側で再チェックすることになり、2月の年金支給日までに正しいデータに修正することができなかったというわけだ。
とはいえ、機構の杜撰な対応には開いた口がふさがらない。周知の通り、年金の支給日は2か月に一度。偶数月の15日に支給される。機構が扶養親族等申告書の不備を把握したのは、2018年1月初旬。厚生労働省には1月5日に報告していた。
だが、機構は2月15日の年金支給日に混乱が生じる可能性があったことを認識していたにもかかわらず、年金の支給漏れが生じることや、専用相談ダイヤルを設置したことを公表したのは、支給日直前の2月13日。しかも、手段はホームページだ。
年金受給者で日頃から機構のホームページをチェックしている人など、そうそういないだろう。案の定、2月15日の年金支払い日には、「いつもよりも年金額が少ない」という問い合わせが殺到した。
結局、支給漏れの詳細は、3月20日に開かれた機構の会見まで明らかにされなかった。