「ナマの日本美術を観に行こう」のコンセプトで始まった大人の修学旅行シリーズ。今回は徹底した自然主義的写実を貫いた彫塑家・朝倉文夫が、81歳で没するまで暮らした自宅兼アトリエ「朝倉彫塑館」を訪れた。日本の彫塑界を牽引した作家は何を想い、何に没頭したのか。生徒役の壇蜜が凛とした邸内で、今にも動き出しそうな作品群に刮目した。
山下:朝倉文夫は昭和23年に彫刻家として初の文化勲章を受章した、日本の彫塑(*注)界を代表する人物です。東京・台東区谷中にある「朝倉彫塑館」は、朝倉が自ら設計・監督した自宅兼アトリエで、昭和10年に竣工。天井高が8.5メートルもある広々としたこのスペースは、アトリエとして使われていました。
【*注/彫り刻む技法「彫刻」とかたちづくる技法「塑造」を合わせた造語で「ちょうそ」と読む。朝倉の師・大村西崖が提唱し、朝倉は終生この言葉にこだわった】
壇蜜:大きな窓から春の光が差し込んで、彫刻も気持ちがよさそう。玄関から一歩足を踏み入れると穏やかな空間が広がっていますが、所どころに芸術作品が並んでいて、庭園や書斎、床の間といった生活の場もあって。あっちを観て、こっちも観てと忙しく、この空気になじんでいくには、ゆっくり時間をかける必要がありそうです。
山下:『翼』と同じポーズをした壇蜜さんも、のびのびと気持ちがよさそうでしたよ。
壇蜜:お恥ずかしい(笑い)。芸術作品として作られたブロンズの色や姿に、生身の人間が近づこうとするのは無理だと思います。横でまったく同じことをすると、いかに人間のバランスが悪いか、すぐにバレてしまいますね。