3月から都内の郵便局や公共施設、大手行の支店など9000か所で『東京くらし防災』(都発行)と題されたピンク色の小冊子が配られている。
防災ブックといえば2015年9月に750万部が作成され、都内全世帯に配布された黄色い『東京防災』が記憶に新しい。都外からも希望者が殺到し、有料(140円)で販売したものの一時期は増刷が追いつかないほどだった。そのため「舛添都政時代の貴重な“ヒット政策”」(都庁OB)といわれる。
国政に世間の関心が奪われ影の薄くなった小池百合子都知事(65)が、舛添都政の防災ブックを“小池色”で上書きしようとしているのか──都に聞いた。
「『東京防災』はいまも入手できますし、今回は“女性目線の防災ブック”という切り口で3億円の予算を確保し、初版100万部を印刷しました。すでに追加の発送依頼が届いているため、25万部を増刷中です。知事から『3・11の困りごとの体験談も盛り込んで被災者目線に立った工夫をするように』と指示を受けて作成しています」(総合防災部防災管理課)
確かに生理用品や乳児用液体ミルクなどの備えも記してある。ただ、「冊子には別の意味がある」と語るのは都政担当記者だ。
「2016年12月に、女性目線での冊子づくりを提案したのは、都議会公明党でした。当時“都庁は伏魔殿”と自民党主導の都政に矛先を向けた小池氏は人気絶頂期で、公明党も自民との連立を解消して小池与党になったばかりだった。小池氏は2017年度予算で公明党に大きく配慮し、その象徴的な政策の一つがこの防災ブックなのです」