1996年の流行語大賞にも入賞した「援助交際」とは、若い女性があらかじめ対価を決めて、男性とデートや食事、ホテルへ一緒に行くことを指す隠語だった。それから約20年が経ち、SNSの普及によって、その「援助交際」を副業のようにして暮らす女性も出現している。ライターの森鷹久氏が、社会人として地道に働く傍らで援助交際をやめられない女性の実態に迫った。
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東京都東部に住む派遣社員のA子(二十代)は、勤務先の大手OA機器メーカーの営業所を17時ぴったりに出ると、電車で千葉県某市の繁華街まで移動し、カフェに入った。その十数分後には、カフェの前に30代前半と思われる男性が現れる。スマートフォンに目を落としていた男性が、カフェを出てきたA子の姿に気がついた。
「A子さんですか? 初めまして。とりあえず軽くメシでも行きますか」
「お腹減ってるんですー」
「何か食べたいものとかありますか?」
「初めまして」という挨拶を除けば、妙齢の男女が仕事後に落ち合い、 食事などを取って“デート”しているようにしか見えない光景。だが、食事後に二人はスムーズにとラブホテルにチェックインすると、A子は男性から現金三万円を受領した。デートの待ち合わせに見えたあの場面は、まさに「援助交際」が始まる瞬間だったのだ。
A子は東京都下の女子高に通っていた10年ほど前、知人に誘われて初めて「援助交際」に手を染めた。当時はスマホもなければツイッターなどのSNSもなく、いわゆる「出会い系掲示板」にガラケーで書き込み、相手を募ったという。
その後、大学に入って彼氏ができても、寂しかったり退屈だったりする時には“暇つぶし”に、また少々物入りの時には「援助交際」をすることによって生活してきた。社会人になってからも、職場で嫌なことがあったり疲れを感じると、同様に「援助交際」をすることでストレスを発散したと話す。A子にしてみれば、援助交際はなんら悪いことではなく、もはや生活の一部とすら言って良い「日常」だ。
「売春が悪い、っていうのはウソでしょ。違法なのは管理売春とか未成年の売春で、しかも未成年が売春したとしても悪いのは買った方。男にご飯やホテル代、服代をおごってもらってヤラせる、っていう普通の女もやってることと、どこが違うの?」(A子)
開き直るA子の言うとおり、性交を前提に、男女間に金銭の授受が発生することそのものは違法にならない。女性が誰かに「管理」されていたり、未成年であったりすれば、それは違法になる。そしてA子にしてみれば、正式な交際関係にある男女間でもモノやカネのやりとりは普通であり、その延長線上に性行為があるという。どこに違いがあるのか、そう訴える。
援助交際歴が10年を越えようとしているA子だが、危ない目に遭わなかったわけではない。ストーカーに追われ、知らない間に裸の映像を撮影されて、脅迫されたこともある。親にもバレて、家族仲が不安定になったこともあった。それでもやめなかったのは、一度、風俗店で働いた経験が影響をしていると説明する。