がん治療は長期にわたって激しい痛みや副作用に悩まされる──そんなイメージを覆す最先端医療が「重粒子線治療」である。
「この治療法は治療回数、日数が少ないため、入院の必要がありません。肺がんならわずか1回の照射で完了することもある。仕事や日常生活を続けながら治療でき、メスを入れる必要も、痛みもありません。大都市・大阪の中心地でこの治療が受けられることは、日本のがん治療において大きな意味をもちます」
そう語るのは大阪重粒子線センターの溝江純悦・センター長だ。同センターは3月1日、日本で6番目の重粒子線治療施設としてオープンした。
重粒子線は、一般的な放射線治療に用いられるエックス線と比べて、がん細胞をピンポイントで狙い撃ちできるため副作用が少ない。また、体内の奥深くにあるがんにも有効で、効果はエックス線の2~3倍に上るという。
「呼吸によって人間の臓器の位置は常に変動していますが、今回導入した最新機器はその誤差を修正し、正確に重粒子線を患部へ照射できます。そのため切除できない部位をふくめ、ほぼすべてのがんに対応できる。体への負担がほとんどないため、高齢者にもやさしい。先進医療のため患者負担分は約300万円と高額ですが、切除不能な骨軟部腫瘍に加え、今春から前立腺がんや頭頸部がんの一部が公的医療保険の適用となります。今後ますますニーズが高まるのは間違いないでしょう」(溝江氏)
同センターは大阪府の土地を借り受け、建築主・大阪重粒子線施設管理と設計監理・日建設計、施工・鹿島建設、治療装置・日立製作所の4社共同プロジェクトとしてスタートした。