「ネットでヤラセじゃないかって指摘されてるの見たけど、このシロートが! って思ったね」
そう憤るのは、青森県・大間のマグロ漁師・南芳和さん(33)だ。彼が出演したドキュメンタリー『マグロに賭けた男たち』(テレビ朝日系、2月18日放送)で、釣り上げた直後の映像に不自然な点があるとネット上で指摘が出たのだ。
同番組は、2003年から続く青森県・大間に住むマグロ漁師を追った2時間枠の人気ドキュメンタリー。2月18日に放送された回では、大間で「若手ナンバーワン」と紹介された南さんが弟とともに兄弟船でマグロを釣り上げる場面に密着している。
指摘されたのは次のような内容だ。
「釣り上げたばかりのマグロの眉間に神経締めをしたような跡があるが、この細かい作業を海中で処理することは不可能なため、ヤラセの可能性が高いのではないか」
神経締めとは、魚の眉間に細い穴を開けて針金を通すことで“脳死状態”にさせ、鮮度を保つという技法。一般的には魚を船上に釣り上げてから行なわれるため、釣ったばかりのマグロに神経締めの跡があるのは不自然というのだ。
実際はどうなのか。真相を確かめるべく、記者は大間まで飛んだ。
漁を終えて仲買人の事務所の畳スペースで仲間たち4~5人とくつろいでいた南さん。体重100キロ超と思しき巨漢で、首には金色のネックレスをかけており、一見すると強面だ。思い切って本題を切り出した。
──釣ったばかりのマグロに、すでに神経締めの跡があったことから、ヤラセではないかと言われていますが、実際はどうなのですか?
「ああ、あれはさ、わい(俺)はマグロにカギをひっかけてクレーンでぶら下げた状態で神経締めしているけえ、甲板さ上がったときにはもう穴が空いとるんだ。普通は甲板の上でマグロば押さえつけて神経締めするけど、わいは少しでも鮮度を良くして美味いマグロば届けたいけえ、そうしとるんよ。研究した結果じゃけえ、ヤラセは絶対にないよ」
その後、放ったのが冒頭の一言だ。南さんが続ける。
「わいは役者じゃないけえ、カメラの前で芝居みたいなことしたら、ぎこちなくなってしまう。でも、神経締めの跡があるからおかしいとか、ずいぶん細かいところまで見てるんだなあと感心したわ」