作家の佐藤優氏と思想史研究家の片山杜秀氏が「平成史」を語り合うシリーズ。今回は、安倍晋三首相の外交手腕について語り合った。
片山:戦争に負けた日本はアメリカから憲法、戦後民主主義、教育、個人主義などの価値観を押しつけられた。それをチャラにして、戦前日本の延長線上で、日本を作り替えたい。それが、安倍首相が言う戦後レジームからの脱却でしょう。日本会議が安倍首相の心臓ならそういう筋書きになる。脱アメリカとも言いかえられる。でもトランプ政権との蜜月などを見るとやはり辻褄が合わない。
佐藤:2015年末の慰安婦問題の日韓合意(注1)もそうです。我々、外交に携わった経験のある者からすると信じられない政治決断でした。そもそも日本政府が慰安婦問題で軍の関与を認めたのは1992年。翌年の河野談話で韓国に謝罪しました。保守派から問題視されますが、関与は認めるが補償はしないという日本政府のスタンスを示したに過ぎません。
【注1/2015年の12月末、日韓両政府が慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決させること」で合意した。韓国政府が設立する財団に日本政府の予算で10億円を一括供出することを表明。韓国政府は、ソウルの日本大使館近くの少女像を「適切に解決されるよう努力する」とした。しかし2017年に大統領に就任した文在寅によって反故にされつつある】