特定健診・特定保健指導、いわゆるメタボ健診が始まって10年経つが、血圧、血糖、血中脂質が高くなる生活習慣病の患者は増加中だ。10年前よりも健康意識は高まっているはずだが、なぜ患者が増えるのか。予防の考え方に誤りはないのか。岡部クリニックの岡部正院長に聞いた。
「メタボ健診というと、腹囲を測るイメージが強くあります。生活習慣病を防ぎ健康寿命を延ばすために始まったこの健診は、内臓脂肪の量を判断する指標として、体重ではなく腹囲に着目しました。その点が新しかったために、あまりに腹囲が強調されて伝わってしまい、基本的な考え方が置き去りにされてしまいました。それは、内臓脂肪がもとになる、血圧・血糖・血中脂質の3つの数値が作用し合うトリプルリスクに気をつけようということです」
腹囲さえ基準範囲内であれば大丈夫という風潮に岡部医師は警鐘を鳴らす。たとえば、メタボ健診では腹囲の基準値が男性で85センチ、女性で90センチまでとなっているが、すべての人に同じ数値を基準値として適用するには無理がある。
「腹囲を気にするのは、内臓脂肪の量を現すひとつの基準として一理あります。ただ、筋肉の量には個人差がありますし、身長が150センチの人と180センチの人が同じ基準になってしまっているのも問題があります。腹囲が基準内でも、リスクを抱えている人はいるんですよ」
人間の体は円筒でも四角でもないので、広く知られている身長と体重から計算するBMI値という体格指数も、健康でいるための判断基準としてはふさわしくない。では、内臓脂肪の量の増加は何で知ることができるのか。
「女性なら18歳、男性は20歳の頃の体重と比べるのが、一番、わかりやすいと思います。メタボ健診で腹囲などの数値が基準値におさまっていても、若い頃よりも10キロ以上、体重が増えている場合は内臓脂肪が増えたと考えるべきです。内臓脂肪が多い人というのは、高血圧・高血糖・高脂血症などを引き起こしやすいんです。ひとつでも高めの数値があらわれたら、血圧・血糖・血中脂質の3つすべてをケアする、トリプルケアをしてゆくべきです」
なぜ血圧・血糖・血中脂質の3つを同時にケアするべきなのか。それは、この3つのうち1つでも高い数値を示し始めると他の2つも引きずられるように悪化しやすくなり、また1つだけでなく2つ、3つと高くなると、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞などのリスクが増大するからだ。