「老後破綻」という言葉を聞いて久しい。現役時代にそれなりの収入を得ていたとしても、老後生活の実態から目を背け、気が付いたときには老後貧乏に一直線という人が後を絶たない。実際、厚生労働省の調査によると、2017年10月時点で全国の生活保護受給者は1649万2907世帯と過去最高。そのうち、65歳以上の高齢者世帯が過半数以上を占め、うち9割が「おひとりさま」だった。つまり、高齢者の貧困は拡大し続けているのだ。どうすればいいのか。生活のダウンサイジングに慣れておくことに加え、徹底的に節税し、かつ合法的に収入を増やす以外にない。『やってはいけない老後対策』(小学館新書)の著者である元国税調査官の大村大次郎氏に話を聞いた。
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━━生活保護受給者の過半数が高齢者と聞くと他人事ではいられませんね。
大村:金融広報委員会(事務局・日本銀行情報サービス部)の調査によると、夫婦二人で老後の1か月に必要な最低予想生活費は約27万円。生命保険文化センターによれば、ゆとりある生活を送るためには約35万円が必要というデータが出ています。しかし、厚労省発表の平成30年度の年金支給額は、平均的なサラリーマン家庭の夫婦二人で約22万円と最低予想生活費に5万円足りず、ゆとりある生活を送るには13万円足りない計算になります。人生100年時代といわれる時代に公的年金以外に収入がない場合、多くの高齢者が生活保護受給者になる可能性が高いといっていいですね。
━━公的年金に頼っては危険ということでしょうか。
大村:実は夫婦二人で約22万円という試算が出ているが、年収500万円前後の平均的なサラリーマンの場合、公的年金はおおよそ15万円くらいです。税金や社会保険料を引くと12~13万円くらいです。ましてや自営業者の場合は満額もらっても夫婦二人で12万円台です生活保護レベルと変わりません。配偶者が存命中は、配偶者の年金もあるからやっていけますが、死別したり、離婚したりで単身者になった途端に貧困に直面してしまうのです。生活保護の場合、税金や医療費がタダな分だけ、年金生活者より恵まれているかもしれません。
━━退職金を取り崩しながら、生活をすることを考える人も多いと思うのですが。
大村:経団連発表の大卒会社員の退職金は約2300万円です。仮に最低生活費に足りない5万円を取り崩して30年経つと手元には500万円しか残りません。自宅を持っている人の場合、修繕費などもかかるし、老後の医療費や介護費も膨らむことを考えると心許ない。しかも、経団連加盟企業は一流企業ばかりです。多くの中小企業の退職金は1000万円台前半です。とうてい無理があります。しかも、公的年金は将来にわたって年々目減りしていくという仕組みも法律ですでに決まっています。
━━ではどうすればいいのでしょうか。
大村:公的年金以外に収入の無い人はできるだけ長く働くことは当然ですが、様々な制度を駆使してお金を確保することです。たとえば、65歳まで再雇用されて退職した場合は、雇用保険は支給されません。しかし、65歳の誕生日の2日前までに退職して、ハローワークに行き、求職活動することで5か月分の雇用保険がもらえます。この時点で65歳を超えていても問題ありません。再雇用で給料が大幅に下がっていたとしても、多ければ5か月合計で100万円近い雇用保険を手にできる可能性もあります。また、有名なところでは、確定拠出年金に加入して節税しながら私的年金を増やす方法がありますが、ほかにも長生きすればするほど得をする“とんちん年金”などに加入することも一つの方法です。これは私も加入しようと考えているものです。