毎週金曜日になると、吉野家やサーティワンアイスクリームの前に行列ができるのが恒例となっている。携帯電話会社による無料クーポン配布の影響だ。経営コンサルタントの大前研一氏が、こうした無料のものに群がる消費行動について考察する。
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学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の公文書改竄問題で、国会の空転が続いている。国税庁長官だった佐川宣寿氏が理財局長時代に虚偽の答弁をしたと指摘され、決裁文書の書き換え疑惑も追及されて辞任。内閣支持率が急落し、麻生太郎財務相や安倍晋三首相の進退が問われる事態に発展している。
野党は、安倍政権を退陣に追い込む構えだが、そもそも今度の「働き方改革」国会は、当初から与野党の議論があまりにもお粗末なものだった。裁量労働制に関する首相答弁の労働時間の数字が間違っていたことで、法案から裁量労働制の対象拡大が削除された上、財務省の疑惑が表面化したことで、それ以外の働き方改革の論議も宙に浮いたまま、膠着状態となっている。
確実に言えるのは、国民の生活とかけ離れた今の国会審議を見て、将来に希望を持てる人は1人もいないだろうということだ。
新刊『個人が企業を強くする』(小学館)で書いたように、日本はこの20年間、給料が上がっていない。日銀の黒田東彦総裁が5年前の就任時に目標に掲げた「2年で2%」の物価上昇も全く達成できていない。にもかかわらず、それを新聞やテレビの大半は批判するどころか、安倍首相が黒田総裁の再任を決めたことについて「大規模な金融緩和によって日本経済の回復をけん引した実績を評価した」(日本経済新聞2月10日付)、「続投を期待する声が多かった」(産経新聞同日付)などと好意的に報じている。この人事を槍玉に挙げて、国民が暴動を起こしたり、抗議デモで怒りをぶつけたりすることもない。