日本の絵師たちは、蘭学をとおして、江戸時代から西洋絵画を意識していた。クレオール化は、けっこう早い段階ではじまっている。近代以後の保守的とみなされる作品群にも、大なり小なりその感化はあった。しかし、尖鋭的な方向をめざした表現とのあいだには、溝もある。その偏差が、よくわかる。また、国家総動員の一九四〇年代にようやく解消されたという指摘も、なるほどと思う。
二〇世紀のモダンアートは、日本絵画の評価をも左右した。一九一〇年代に俵屋宗達が見なおされる。古風な南画が、新しい見方とともに浮上する。それも、西洋における現代美術の動向と、ふかくつうじあっていたらしい。美術史におけるカノン形成も、クレオール的であったということか。悲母観音(狩野芳崖画)の模写説をくつがえしたりする通説批判の数々も、勉強になった。
※週刊ポスト2018年4月13日号